紅蓮の星屑

揺れる振動で目を覚ます。


彼は普段よりも高い位置から映る景色により、どうやら入口付近まで担がれて来たのだと理解をした。


「ハァ……。」


と小さくため息を付くと、気が付いたのか、彼を担ぐ大柄な男が言葉を掛ける。


「起きたか?」


「あぁ、起きたから降ろしてくれないか?」


すると担いでいる男は、疑問に満ちた声で質問に答えた。


「逃げるだろ?」


言われて、もう一度ため息混じりに言葉を放つ。


「逃げはしないから。」


弱々しい声を聞いた男は、観念した様子に応え、彼を肩から降ろした。


それから自分の脚で歩き始めると、直ぐに大柄な男へ疑問をぶつける。


「何処に連れてくんだ? 俺を。」


「入口に停めてある車までだ。」


と答えられ、黒塗りの車を思い出す。


しばらく歩き、入口まで戻ると、例の車が目の前に停まっていた。


大柄な男が車のドアを開き、中へ入れと促す。


「あぁ……入ればいいんだろ、入れば。」


渋々車の中へ入ると、眼鏡を掛けた黒いスーツの男が、頬を緩ませながら待ち構えていたのである。


知的な雰囲気を漂わせるその男は、不敵にも足を組んだまま声を掛けて来た。


「やぁ、初めまして。」



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