ノブレッソブリージュ
バスルームから青年が出てきた。
ズボンだけを履き、濡れた長い蒼髪をタオルで拭いている。
「服を着て出てこいよ」
「ごめんね、上着置いとくの忘れちゃってさ」
ノエルは窓際からちょっとずらした椅子に腰を降ろし、同じく窓の外に目をやった。
石造りの街は雨で綺麗に洗い流されている。
だから、血こそ見えねども、転がった屍たちの腐敗を淡々と推し進めるのであろう。
「もう行ったんだ」
「ああ。
ついさっき、引き上げたみたいだ」
「じゃあ、雨が止むまで待つ?」
「すぐ行く」
「せっかちな男は嫌われるよ」
「浮気性よりはいいと思うぜ」
ローラントはカーテンを閉め、肌蹴たシャツのボタンを閉じた。