ノブレッソブリージュ
馬でも探そうか。
一頭でもいれば疲労も半減できよう。
二人は三日前に立ち寄った辻馬車の中央駐車場に赴いた。
「あ、いた」
ノエルが指をさした馬小屋には、黒毛の凛々しい顔をした綺麗な馬がちょうど二頭いた。
反帝軍もなにか急ぎの用だったのか、それとも馬畜生には興味を示さなかったのか、殺して行かなかったようである。
それでも、馬小屋に逃げ込んだ少年は息絶えているのだから、なんて残酷なことか。
「乗れるか?」
「怪我はしてないみたいだし、大丈夫じゃないかな」
馬は意外に落ち着いていて、大人しかった。
ここにいるよりかは、連れて行って帝都で飼う方が幸せだろう。
「パーティが増えたな」
「なに馬鹿なこと言ってんだおまえ」
ローラントは仰向けに眠る少年の手に、持ち合わせた数枚の札を握らせた。