オルガンの女神
一方、美術館の応接室では、三脚のガラステーブルを挟む革製ソファに座る、氏と一人の兵士。
そこは赤い絨毯が敷かれ、観葉植物がぽつりと置かれた小さな空間。
氏が淹れた紅茶をたしなむ兵士は、制服を纏(まと)わぬ一風変わった風貌だが、背もたれに腕を回す様は、その位が窺える。
派遣型軍事組織WALTZ(ワルツ)特兵、ガンツ・ジュード。
WALTZ(ワルツ)では隊に属する事が義務づけられているが、個の“力"が一隊に及ぶ場合、個々での派遣が認められる。
当然、支給される額も一隊相当。
それが特兵。
「わ、わしの金貨が、ね、狙われる…!」
「奴(やっこ)さんはあのお調子者(ウッドペッカー)。空に予告状を届けるとは、全くお騒がせな野郎だ」
「わしの…!わしの…!」
「落ち着きなよ旦那。何の為に“俺"を雇ったのさ。問題ない。何事もなく、騒ぎも静まる」
「…あ、ああ」
その時だった。応接室の扉が突如乱暴に開き、慌てた様子で兵士が言葉にする。
「たった今、塀外にて不審人物を二名捕らえたとの情報が!」
「ほ、本当か…!」
「そいつは朗報だ。で、その二名の特徴は」
「はっ。一名は目に掛かる程の赤髪。もう一名はスキンヘッドの大柄の男。どちらもスーツを着用し、現在無言を撤していますが、二名を今件の主犯と断定するのも時間の問題かと」
「ほう、もう一人は“暴君(サップ)"だな。呆気ない気もするが、一度確認しよう」
そう言ってソファから腰を伸ばす特兵ガンツ。
「わしもいく」
そう言った氏に一瞬だけ顔を濁したが、すぐにそれを承諾する。
美術館の外へと向かう最中、氏は先程の兵士の足元を見ながら尋ねた。
「丈が足りてないのではないか?」
「む」