好き。
私は、何歩も先を歩きたかったわけじゃないのに。
ただ、近づけれれば。近づいて、でも隣には並ばないように。
前を歩く秋くんを、黙って後ろで見れればそれで良かったのに。
「…勉強、やめようかな」
「はあ?」
「何言ってんだこいつ」と言いたげな顔。「バカじゃねぇの」と目が訴えてる。
「ったく、お前は頭いいのか悪いのかどっちかにしろ」
「…頭いいもん」
「いいや、悪いな」
即答しなくてもいいのに。
ぶすくれる私は、今相当酷い顔をしてるに違いない。
可愛くない、自分でそう思える程に。と、そう考えてたときだった。
「…さっき言った大きいは、メンタルのこと」
「え、」
「その前に言った何歩も先に進んでるは、俺にとっちゃ憧れ」
「…憧れ?」
あまりにも予想外なことを言い出した秋くん。
私はただそれを馬鹿みたいに復唱するだけだった。
「覚えてるか?お前がここに来たばっかの頃。俺がお前の病気を治すって約束しただろう?」
「…忘れるわけないよ」
「なら話は早い。俺はさ、医者んなるのは昔からの夢だったし。
けど、やっぱ諦めたくなるときもあったんだよ」
「あ、秋くんが!?」
意外だ、意外すぎる。
なんでもそつなくこなす秋くんだったから。
“諦める”なんて言葉が口から出てくることに驚いた。