好き。
や、やってしまった。
「へへっ、秋先生に会えたから興奮しちゃって…」
それに早歩きしちゃったのも原因かもしれない。
そう言うと秋先生は「はぁ」と、わざとらしい大きさでため息をつく。
「…お前は3年経っても何一つ変われねぇのか?」
「こ、これでも変わりましたよ!私もう高校2年生です!!」
――――3年。
あれからもう、3年も経っていた。
秋先生の医大合格が決定し、冬に県外へ引っ越すと言っていたあの年。
駅まで行って見送りはできなくとも、病院から見送りくらいできる。
そう、余裕すら感じていたのに。
「黙って引っ越すってなんてどうかしてます!」
「んなの俺の勝手だろう?」
「っ、そうですけど!!」
確かに、確かにそうなんだけども。
でも!と、抗議をしようとしたときだった。
「…おーい、バカ二人。感動の再会中悪いが今会議中な?」
「「あ」」
ある人の一声で、我に返った私たち。
「って、愛斗くん!!」
「おー。久しぶりだな、若ちゃん」
“若ちゃん”
数年ぶりに呼ばれたソレに、どこかくすぐったさを思い出す。
榊原愛斗先生。私は愛斗くんと呼んでいるけど。
秋先生よりも2歳年上で、いわば先輩にあたる。