好き。
…けど、
「悪い愛斗、俺一回席外す」
「おいおーい。仮にも俺先輩なんだけど?つか、研修医の身で会議抜け出すのお前くらいだ」
秋先生は、愛斗くんに対して思いっきりタメ口。それもそのはず、二人は生まれたときからの幼馴染らしくて。
「親父さんに怒られても知らねーからな」
「愛斗が怒られることがあっても俺は注意だけだ」
「…っはあ」
愛斗くんはなんだかんだ言って秋先生にすこぶる甘い。
「兄貴みたいな存在だな」と、小さい頃にこっそり教えてくれた。
そのときの秋先生の顔といったら、滅多に見れるものじゃなくて。
本当に尊敬しているような、温かい瞳だったのを覚えてる。
「…おい、何ニヤニヤしてんだ」
「え、え!?」
「行くぞ」
ぐいっと、それはそれは強く引っ張られた腕。…懐かしいな、と思ってみたりみなかったり。ニヤニヤ笑ってた顔を見られたのは、この際気にしないでおこう。
手を繋げただけで、満足してる自分がいるから。
「って、どこに?」
「…着いてくれば分かる」
どこだろう?と、そんなワクワクに包まれた興味心。ものの数分でガラガラと崩れるわけで。
「ここ病室!!」
「あったりまえだろーが。お前検診あるだろ!それなのにわざわざ一番遠い研修医室まで来るし、バカじゃねぇのか」
さ、さっきから聞いてれば罵られて罵られて罵ら……っ、罵られてしかいない!!