好き。
-還った日常-
「若葉、起きろ」
「ん、秋先生?……っ、秋先生!!」
「!?」
目覚めはここ数年で一番。微かにカーテンから漏れた光が、今までより輝いて見えるから不思議。
きっとこれも、目の前にいる彼のおかげに違いない。と言うより、彼のおかげだ。
「おま、いきなり抱きつくのやめろ!お互い心臓に悪いっつの」
目覚めて早々、瞳に映るのが秋先生だなんて素敵すぎる。
だから思わず抱きついてしまった。状況反射に近いそれ。クスリ笑ってしまう。
「抱きついて笑って忙しい奴だなお前は」
「失礼な、表情豊かって言って欲しいんですけど」
「はいはい、つかなにお前。敬語直さないつもりか?」
“直さない”んじゃなくて、正しくは“直せない”。ただでさえ年上、医者、そして離れていた月日。
それらは案外、私的にダメージというか、なんというか。感じるものが大きかったらしい。
「直しませんよ。それに慣れてしまえばこっちの方が案外楽ですし」
「…(俺の方が慣れないから言ってるんだろうが)」
眉をしかめて、急に黙り込んでしまった先生。手をヒラヒラと先生の目の前で振ってみる。けど、いまいち反応なし。
「……秋先生?」
「…ん、ああ。…検診するぞ」
「えー」
何か思いつめたような表情していたから少し心配してたのに。…余計なこと考えるんじゃなかった。
「ほら、早く服脱げ」
「…何か言い方が卑猥です」