好き。

「…なんて横ぼ、」

「それだったら、俺の昼休憩の時間に一緒に行ってもらった方が数倍助かる」

「…っ、」


わざわざ言葉を遮ってまで言ってきたのは、私にとって胸が温かくなるような言葉で。幸せな気持ちにならざるを得ないような、そんな魔法。


「秋先生、ずるいなー」

「行かないならいいけど」

「断らないって知ってて言ってるじゃないですか」

「当然」


自信に満ち溢れた言葉と表情。
腹立たしいと思うのに、それが憎めないんだから仕方ない。結局は断われないって、私自身が嫌というほど理解しているのだから。


「ただ、昼休憩が前後すると思う。一応13時ってことにはなってるからそのあたりに迎えに行く」

「え、いいですよ。直接中庭のベンチに集合の方が分かりやすいですって」

「これでも心配してるんですけど?」

「そこまでか弱く育ってないですから!」


腕組をしながら壁に寄りかかって、そして大きなため息。見せびらかすようなそれに、ついムキになってしまうのは私の方が幼いせいなのだろうか。

こんなちっぽけなところでさえ、私は秋先生との隙間が埋められないことを自覚するのだ。


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