好き。
‐あーくんと私‐
「は、初めまして」
「…(なにこのちんちくりん)」
出会いは今から8年前。
当時小学2年生だった私と当時中学2年生だった彼は、高代病院という県で一番有名な病院で出会いました。
幼かった私でも分かるくらい、彼はとても顔が整っている人で。
それでも出会ったときの顔は、しかめっ面に怪訝そうな顔。
眉を思いっきり寄せる姿に、私は恐怖心しか抱いていなかったと思います。
彼が実際、私を“ちんちくりん”と思っていたかどうか定かではありませんが。
身長差約50センチはある私と彼。
遥か下にある私の頭は、きっとちんちくりんだったでしょう。
「若葉ちゃん、こいつは俺の息子でね。
口は悪いわ態度はでかいわ。けど、真っ直ぐで優しい子だ。
きっと若葉ちゃんの頼れるお兄ちゃんになれる」
「…は、親父何言って!?」
「とりあえず黙っとけ、秋」
“お兄ちゃん”
そのなんとも言えない心地良い響きに、私は一気に有頂天。
一人っ子だった私にとって、それほど嬉しいものはありませんでした。
「は、春伊若葉です!今日からこの病院にお世話になりましゅ……っ、」
「(こいつ今噛んだ)」
「……噛んでません!」
片手には小さなうさぎのぬいぐるみ。
もう片方には腕いっぱいのくまのぬいぐるみ。
嬉しさと恥ずかしさと、それらを必死で隠そうと顔をうずめて。
「…これ、お前の大事なもんなのか?」