好き。
* * *




ガラッ



一日に数回しか開閉されないそのドアの音に、私は瞬時に反応した。



「あーくんだ!」

「うるさいうるさい、」



黒い学ラン姿のあーくん。
中学校、というのに私は行ったことないけど。



絶対あーくんが一番似合ってるに決まってる。



「あーくん、今日も学校のお話してね?」

「……いいけど、お前毎日よく飽きずに聞けるな」

「だってあーくんのことだもん!」



「はあ、」と小さくため息をつくあーくん。
でもあーくんは絶対お話をしてくれる。
いっぱいため息をついても、不満そうに頭を掻きながらも。



「……少しだからな?」



そう言って、あーくんはゆっくり椅子に座った。
ほらね、あーくんはすごく優しい。



「今日はー、運動会の話し合いとかあったな」

「運動会!?かけっことかするの?」

「…かけっこ。んまあ、そんなもんか」



かけっこいいなー。



「…私も走りたい」



と、そこまで言って私は慌てて口を塞いだ。



「い、今の嘘だよ!私走るの嫌いだもん!」



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