好き。
ギュ、とベッドのシーツにシワがよった。
「……ふーん」
「本当だよ!?」
目を細めて、足を組んだあーくん。
「じゃあお前が走れるようになっても、一緒に走れないわけだ」
「え」
「残念だなー。一緒に走りたかったのに」
「あ、あーく―――」
「ったく、ガキはガキらしく正直に言えよ」
「あーくんも十分ガキだもん」とは、言えなかった。
私から見たら、あーくんは十分大人だから。
「だ、だって私こんなんだもん」
だから変わりに、言い訳をした。
それは悔しさからなのか、ただ反発したかったからなのか分からないけど。
でもなぜか、モヤモヤしたから。
片腕には、一定の時間置きに投与される薬。近くには酸素マスク。
毎日飲む何種類もの錠剤。
「走れるわけ、ないもん。あーくんだって知ってるでしょう?」
生まれつき体が弱い私。走ることはもちろん、一時は長時間歩くことさえ危ないって言われてた。
これが治るんだったら、私の屁理屈や我が儘も少しは減ってる、多分。
だけど、私の担当医さん。あーくんのお父さんである雄大先生には「回復するのはとても難しい」と教えてもらった。
「……きっと治らないよ」
「最初から諦めてたら意味ねぇだろ」
「で、でも!なんとなくだけど、分かるもん」
「…」