自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
5月26日(日)その3

 産科直通の電話。

 私は電話での説明が苦手なので、今の症状を紙に書いてから、別室で一人電話を掛けた。


『どうしました?』と女性の声。

「そちらで出産の予約をしている~ですが、陣痛が始まったようです」



『そうですか。痛みの感覚はどのくらいですか?』

「2~30分に1回くらいです」

『なるほど~』

 緊迫している私とは反対に、なんだか、とてもゆっくりな相手の女性。



『それで、痛みはどのくらい続きますか?』

「5~10分くらいです」

『なるほど~』




『それで、痛みは我慢できますか?』

「……」


 我慢できるかと聞かれたら、今までずっと我慢しているのだから、我慢できている……のかな。

「……はい」

『なるほど~』




 そして。






『ええと、それじゃあね。たぶん陣痛ではあるとおもいますが、まだまだすぐに生まれるわけではないと思うのでね、陣痛だと思っても、何時間かしたら治まっちゃう人もいるんですよ』

「……はい」


『うん。だからとりあえず、ご飯をしっかり食べて、8時頃まで様子を見て、痛みの感覚が短くなるか、破水したらもう一度電話をください』


 8時……



「……はい」









 居間に戻る。

 両親と夫は早々に朝食を食べていた。



 夫「どうだった? すぐに来いって?」


 父「行くか? 寒いから車のエンジンかけてくるか」


 母はバタバタと化粧や着替えをしている。



 電話の内容をそのまま伝える。


「……だからとりあえず、朝食を食べて8時まで様子を見て、それでも痛かったらもう一回電話してっ……て」


 言いながら、また始まった痛みに悶絶。

 10分近く続く。

 息もできず、丸くなる。




 父「なんだ、じゃあ急いでご飯食べる必要なかったな」

 と、私を見ながらくつろぐ。


 夫は怒り気味。

「M(私)が、我慢できるって言ったからだよ! 普通の人は、その痛み『我慢できない』って言うんだよ!」

 心配を通り越して機嫌が悪くなっている。



 母がトーストを焼いてくれたので、クリーミーバターをこれでもかと言うほど塗りたくって口に運ぶ。


 どうせなら、昨日からの便秘も解消させて、すっきりしたい。





 でも……。




 すでに痛みの感覚は10分毎。痛みの長さも10分近く続く。

 なんとかトースト1枚を飲み込むように食べ、ソファーにうずくまる。

 座っていられないけど、横にもなれない。



「どう考えてもそれは我慢できる部類じゃないから! もう一回電話してきな!!」と夫。



 午前6時50分


 もう一度電話。


『どうしました?』


 また痛みが……

「痛みの間隔が10分くらい、、、で痛みも酷くて、、、我慢できないです」

『そうですか。じゃあ、入院の準備をして病院に来てください』




 入院の準備……


 まだなにも詰め込んでいないと気づく。

 余裕のない私に代わり、みんながあれやこれやと言いながら準備する。




 車に乗り込むのも一苦労。





 父の運転で、母と夫と4人、



 いざ病院へ













 




 

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