自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
5月26日 その4

 電話の指示通り救急外来の入り口から、直接2階の受付へ向かう。

 てすりと夫につかまりながら、何度も休憩を挟んでやっとのことでたどり着く。


 受付で、「今朝電話した~です」と伝える。


「ああ、ええと。今担当者呼んでくるので、ちょっと待ってくださいね~」


 近くの椅子にもんやり座る。




 もう、本当に、




 どうしてこんなにゆっくりした対応なのだろう。



 痛みも相まって、イライラ。


 病院内の薄暗さで、不安も募る。



 しばらくして、(私にはめちゃくちゃ長い時間な気がしたけど、たぶん5分くらい?)看護師さん(助産師さん?)がやってきた。


「それじゃあ、子宮口がどれくらい開いているか見てみるので、そこの処置室に入ってください。あ、旦那さんは待っていてくださいね」

 私を支えようとした夫を看護師さんが制止。


「大丈夫?一人で歩ける?」と夫。

「ゆっくりでいいから、一人で歩けるよね」と、看護師さん。

 
 そう言われるとどうしようもない。

 うなずいて、痛みをこらえながら歩いた。


 もう、下着を脱ぐのも、椅子に座るのも、痛くて痛くて辛いし苦しい。

 小さく唸りながら頑張る。



「それじゃ、器具入りますね~」



「!!」




 痛い!!!



「あら、もう4センチくらい開いてるね。これなら今日中に生まれるよ。痛かったでしょう」




 だから、痛いって言ってたじゃん!!




 ……と、内心思いながら「はい、痛いです」と良い子に微笑んでしまう私。




「大丈夫? 着替えはゆっくりでいいからね」


 処置室を出ると、今度は看護師さんが身体を支えてくれた。


 明らかに対応が違う。




 つまり、今までは急を要さないと思われていたんだな。と、なんだか不満。

 でも怒る気力もない。




「子宮口がかなり開いてきているので、今日中に生まれそうですね。今から陣痛室に移りますね」

 看護師さんが夫に説明し、午前9時。やっと陣痛室のベッドに横たわった。



 入院服に着替えて、陣痛の間隔を計測する装置をつけられる。


「しばらくしたら、また来ますね」

 看護師さんは部屋を出ていった。



 夫は丸椅子に座り、「なんだかんだで生まれるね」とそわそわ。

 計測器の針が、ペーパーに小さく波打った線を書いていく。


「なんかさ、急に看護師さんの対応が変わった気がする」と私。

「たぶんM(私)を見て、まだ生まれそうにないって思ってたんだよ。だって臨月とは思えないお腹だし、初妊婦なのに予定日より20日くらい早いから」と夫。

「……こんなに痛がってたのに?」


「それも、Mが我慢して笑ったりするから、あんまり痛そうには見えなかったんだよ。だからMはもっと」


「ちょっと待って」

 また痛みが……


 息ができない。











 数分後。



 収まる。



「はあ、苦しかった~」とすっきりする。

「それで、なんだっけ?」と私。



「なんかイメージと違う。陣痛中って、こんなに会話できるもんなのかな?」と夫。


 確かに。


「この程度だったら、案外スルッと生まれるかもね」と私。

 陣痛が始まると痛いけど、まだまだ我慢できそうだ。



 看護師さんが戻ってくる。

 針で書かれた波波を確認。

「10分間隔で5分くらい痛みが続いていますね。できるだけ呼吸を止めないようにして、痛みを逃してください。またしばらくしたら、様子を見に来ますね」




 再び夫と二人になる。ちょっと談笑。





 陣痛。

 




 痛みが収まる。


 話す余裕が出る。


「どんな風に痛いの?」と夫。





 どんな風……




 う~ん。


 しいて言うならば……






「なんかね、一週間くらい便秘になっていたのが、一気に出そうなのに、それを無理矢理我慢させられているような感じ」



「……よくわかんない」




 結構的確な例えだと思ったのに。



「でもホント、元気だよね。もちろんすごい痛いんだろうけど。普通の妊婦さんより陣痛軽いんじゃない??」と夫。


「そうかも。これなら全然いけそう」




 元々、痛みに鈍感な方だし、『案ずるより産むが易し』なんてことわざが生まれたくらいなんだから、意外と世間で騒がれるほど苦しくないのかも。

 男には耐えられない痛みとか、大げさなんじゃない。


 女の男に対する嫉妬(?)みたいなもんだな、きっと。



 と、余裕をかます私。











 そして








 私は自分が大いに間違っていたと、






 この先すぐ、気づかされる。






 





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