自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
5月26日(日) その5



 陣痛をナメていた。



「M(私)、もうすぐ来るよ」と夫。

 陣痛室に入ってから、どのくらいの時間が経ったのか、よくわからない。



 知らないうちに、夫は陣痛測定器(?)の針の振れから、私の陣痛予測ができるようになっている。




「ヴーーーーーウ、ウウヴーー、ウッ、ウウゥ」

 苦しくて、唸る。




 激痛か鈍痛かと聞かれたら、鈍痛だと思う。


 でも、ただの鈍痛じゃない。



 言うなれば




 激痛的鈍痛だ。





 緊急連絡用のボタンを押す。


『どうしました?』

「痛みが、、、、、前よりも強く、なりました」

『じゃあ、今行きますね~』



 看護師さんが戻ってくる。

「じゃあ、ちょっと子宮口の開き具合を見るので、旦那さん、一旦外で待っててください」



 器具が入る。

「ヴウ~~~」

「痛いね、ちょっと我慢してね」





「5センチだね。10センチ開いたら分娩室に移るからね」



 こんなに苦しいのに、まだ1センチしか開いてない……




 夫が呼び戻され、同様の説明を受ける。


「あ、それから、化粧してる?」

「……はい」



「化粧していると、顔色がわからないから、そこの洗面所で落としてくださいね」


「……はい」




 看護師さんが出て行き、夫に支えられながら備え付けの洗面所へ。

「ウウウゥゥ」

 唸りながら、お湯で何度も顔を洗う。



 クレンジングオイルも洗顔石鹸もないので、手洗い用の石鹸で顔を洗う。



 なかなか落ちない。




 ああ、なんでバッチリメイクなんかしてしまったのだろう。






 なんとか頑張って、それなりにメイクを落としベッドに横たわる。


 顔がバリバリする。



 でも、次の陣痛がやってくると、苦痛の汗でバリバリがベタベタに潤った。


 痛みが終わると、ひどい眠気に襲われる。





 そういえば、人は耐えられない苦痛を感じると脳内麻薬が放出されて眠くなると、聞いたような。


 もしかして、この眠気はそれだろうか。






 と、考えているうちにいつの間にか眠っていて、





「う、ヴウ~~」

 次の痛みで、起こされる。


 その繰り返し。





 朦朧とする中、十時のおやつが運ばれる。


 夫にあげる。







 ふと気づくと、昼食が運ばれている。

 それも夫にあげた。





 少し食べろと言われたけど、食欲なんて沸かない。




 トイレに行きたくなるけれど、トイレに行っても何にもならない。





 あとどのくらい、この痛みに耐えなければならないのだろう。

 今、何時なんだろう。






 横向きに寝るのも苦しくて、ベッドの上で土下座のような格好になる。



 夫が背中から腰をさすってくれる。

「やめて! むりむり」

 触られると、なんかヤバイ。






 苦しみながら思う。

 昨日、一昨日と、食べ過ぎなければよかったと。

 便秘を治しておくべきだったと。




 もし便秘じゃなければ、もう少し苦しくなかったような気がする。




 私はいつも詰めが甘い。




 もう嫌だ。

 死ぬ。

 ホント、死ぬ。






 看護師さんは


「そのうちに、いきまずにはいられなくなる時が来るから、そうなったら教えてください」


 と、言っていたけれど。




 いきむってどんな感じかわからない。

 実はもう、いきまずにはいられない時なんじゃないだろうか。







 そうこうしているうちに、また次の痛み。







 と、、、、、、、




「!!!!! グッッッ……」



「何?? どうした?? M、大丈夫?? どうした?? 大丈夫???」








 勝手にお腹に力が入る。息ができない。



 なんか、出そう。






 必死でナースコールを押す。



























 
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