自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
5月27日(月)その4
 

 シャワーを終えて、保育室にカートを取りに行く。

「ずーっと寝てたよ~」と助産師さん。


 本当によく寝る人だ。



 午後2時45分。

 そろそろ授乳しても良い時間。

 給湯室の冷蔵庫からミルク30mlの入った哺乳瓶を取り出し、40℃の保温器に10分間入れる。

 ミルクが温まるまでに、オムツを交換し、授乳クッションを使って母乳をあげる。

 やっぱり、難しい。




「ちゃんとできてる?」

 助産師さんが来て、記録用紙を確認する。



「ミルクは保温してる?」「はい」

「もう少し膝高くしたほうがいいね」と、枕や色々なものを詰め込んで、調節してくれる。

 でも、やっぱり難しい。

 特に右胸は、上手く口に含ませることができない。



「また寝ちゃいました」

「じゃあ、足をくすぐって」


 その繰り返し。


 午後三時。夫がやってくる。


「旦那さんも来たし、ちょうどいいね。赤ちゃんなんだけど、生まれてから二日目と三日目に体重がガクンと減るんだ。それはどの赤ちゃんにも見られる現象なんだけど、S(私の苗字)さんの赤ちゃんの場合、2000g切るかもしれない。その場合、一日小児科で入院すると思うから」

「はい、分かりました」


「あと、黄疸の検査も低体重の赤ちゃんは、ほぼ100%引っかかるから、その場合も入院になるけど、心配ないから」

「はい」

「じゃあ、授乳はその調子で頑張ってね」


 助産師さんがいなくなって、夫と二人になる。





「ちゃんと母乳出てるの?」と夫。

「たぶん。朝助産師さんにつねられたら、膿みたいに黄色い汁が出てたから」

「へえ~」

「母乳の量が安定するまではミルクも混合するけど、完全母乳を目指して頑張ろうって言われた」


 「元」中の人にミルクを与えながら、午前の講義で完母をゴリ押しされたと告げる。


「無理のない範囲でミルクも混合しつつ育児したいって言ってるのに、完全母乳で頑張ろうって。なんか、完全母乳の押し売りみたいだった」

 不満の私。


「それ聞いて、思い出したんだけどさ」と夫。

「M(私)は陣痛でそれどころじゃなかったし、覚えてないだろうけど、陣痛室に『私たちは完全母乳育児を推奨します!』って書かれたポスターが貼ってあったよ」


「え? そうなの??」

「うん」

「……だったら、バースプランに母乳育児の欄なんか作んないで欲しい」

 本来、バースプランは出産、育児について本人の要望を記載して、病院側が、それに沿ったプランを提案していくはずなのに。


「まあまあ」と夫になだめられる。





 午後5時半まで夫は付き添い、昨日の夜ご飯が、ステーキや鯛など、すごいご馳走だったことや、ビールで乾杯して、話しているうちにいつの間にか寝てしまって、起きたら午前3時だったこと、私の身体をみんなが心配していること、面会に来たがってることを話してくれた。

 その間、数回のオムツ交換も手伝ってくれる。

 夫がいれば、入院も新生児のお世話も、全然苦じゃない。

 あっという間に時間も過ぎてしまう。

「一旦戻って、お父さんとお母さん連れて7時頃来るよ」と夫は帰っていった。


 午後5時45分。

 ミルク30mlを保温器で温め、おむつを交換して、授乳を開始する。

 一人だと、途端に寂しさが募る。





 午後6時。夕食が運ばれてきた。

 

 午後6時45分。

 やっと「元」中の人のお世話が終わり、急いでご飯を食べる。



 早くみんな、来ないかな。



 特に夫が、恋しい。





 







< 214 / 248 >

この作品をシェア

pagetop