自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
5月29日(水) その2
「母乳飲むと疲れちゃうみたいで、ミルクの時には全然起きてくれないんです」と反論してみる。
「うん、そうだよね」と助産師さん。
「でも、S(私の苗字)さんの赤ちゃんは、体重増えないと退院できないから、しっかり飲ませないと」
え??
退院できない??
それって、一体どういうこと?
「……退院できないと、どうなるんですか?」
「赤ちゃんは小児科入院で、お母さんは付き添い入院って形で、残ってもらうことになると思う」
「!!!」
ムリ!!
土曜日の退院も果てしなく長いのに、延長入院なんてありえない! マジありえない!!
「母乳がちゃんと飲めてれば、ミルク10mlでもいいんだけど。次の授乳の時、哺乳量測定しようか」
「はい」
早朝から、保育室で助産師さんに見られながら授乳する。
緊張して、上手くいかない。
テストみたいだ。
何で、こんなことしなきゃならないんだろう。
お腹すいた……
掛け時計を見つめる。
午前7時45分。
ベッドに朝食が運ばれている頃。
午前4時くらいから、ずっとお腹が空いていた。
朝食の時間を、今か今かと待っていたのに。
せめて、朝食食べ終えてからにして欲しかった。
…………
イライラする。
そんな中、
「今日、旦那さん帰っちゃうんだっけ?」と助産師さんが尋ねる。
「はい」
「寂しくなっちゃうね~」
「そうですね」
「でも、旦那さんも、ベビーに会えなくなるから寂しいね」
「そうですかね」
「そうだよ~、一番可愛い時だもん。S(私の苗字)さんは、しばらくご実家にいるんだよね」
「はい」
「それがいいね。やっぱり最初は、色々心配だもんね」
たぶん、私の緊張を解こうとして、話しかけてくれているんだと思う。
ありがたいけど、
なんか、イライラする。
なんとなく、『赤ちゃん最優先! お母さんは二の次ね』と念を押されている気がしてしまう。
お腹が空いていると、ネガティブな思考に陥りやすい。
妊娠してから、食に対して、かなり意地汚くなった。
助産師さんに、悪気はない。
ご飯のことは忘れて、違うことを考えなきゃ。
自分に言い聞かせるが、あまり上手くいかない。
イライラが顔に出始める。
「15分くらい吸ったかな。じゃあ体重測ってみようか」
私の表情を見てなのか、丁度時間になっただけなのか、とにもかくにも、授乳終了のOKが出た。
「元」中の人を体重計に乗せる。
緊張。
体重増えてなかったらどうしよう。
正直、母乳が出ているか不安。
助産師さんが私の乳首をつねると、黄色い母乳が出る。
でも、私がやっても、全然出ない。
もし、体重が増えてなかったら、また何かしらの指導が入るに違いない。
ご飯食べたい。
「30gくらい増えてるね。大丈夫、ちゃんと飲めてるよ」
ホッ。
「良かったです。自分で母乳出そうとしても出なかったので、ちょっと不安でした」と愛想笑い。
「それ、押す場所が違うんだよ」
助産師さんが「この辺を、つまむように押してごらん」と乳輪の辺りを指し示す。
その通りやってみると、黄色い母乳がプツプツと出てきた。
素直に感動。
さすがだな、と思う。
最後は、哺乳瓶でミルクを飲ませる。
「母乳はちゃんと出てるけど、体重増やすためにも、30mlくらいミルクを飲ませるようにしてね」と助産師さん。
やれるなら、やっている。
「寝ているのを起こしながら授乳すると、どうしても30~40分くらいかかっちゃうんです。そうするとミルクの時には、くすぐっても起きなくなるんです」
と、また反論。
「おっぱい飲むのは、赤ちゃんにとって、ものすごい運動だからねぇ」と親身に頷く助産師さん。
これなら。と、思っていたことを口にしてみる。
「順番を変えたらダメですか? 先にミルクをあげて、その後母乳……」
「それはダメ!」
否定、早い!
「初乳は赤ちゃんにとって、すごく大事な栄養がいっぱいだから、まずはおっぱいをしっかりあげて。今はおっぱいの量があんまり出なくて不安かもしれないけど、赤ちゃんが吸ってくれる刺激で、どんどん増えていくから、大丈夫」
……なんか、やっぱりズレている。
私はおっぱいの量について、そこまで深刻に悩んでいないんだけどな。
体重増やす話は、既にどっかへ行ってしまってる。
ここの助産師さんたちの最優先事項は「完全母乳育児」なんだ、と改めて思う。
ノルマとか、あったりして。
そうこうしているうちに、「元」中の人は哺乳瓶を突っ込んでも、くすぐっても、全く飲まなくなった。
丁度、10ml飲んだあたり。
ほらね。
「飲まなくなっちゃいました」と私。
すると。
「ああ、寝ちゃったね。ちょっと貸して」
哺乳瓶を受け取った助産師さんが、
「!!」
思いっきり強引に「元」中の人の口の中へ、それを突っ込んだ。
ぐえっっと、「元」中の人の顔が苦しそうに歪む。
苦しくて薄目を開けた「元」中の人が、ミルクを一口。
でも。
「あ、また寝たか」と、助産師さん。
すると。
今度は足の裏を、強く引っ掻いた。
驚いた「元」中の人、薄目を開けてもう一口。
そして、顔を歪めながらまた眠る。
そうやって、眠ろうとする「元」中の人を無理矢理起こしては、ミルクを飲ませていく。
確かに、飲んでいる。
でも……
すごく苦しそう。
たぶん、助産師さんは沢山の新生児を見てきているから、こういうのも日常茶飯事だし、ある程度雑に扱えるのだろうけど……
可哀想で、見ていられない。
結局、助産師さんは、ミルク20mlを飲ませることに成功。
「こうやって、大変だろうけど、頑張って飲ませてね」
そう締めくくり、哺乳量測定&授乳指導が終わった。
「元」中の人を、保育室に残し(沐浴があるので)、部屋に戻る。
疲れた。
胸もヒリヒリするし、授乳も大変だったけど、
苦しそうな「元」中の人を見て、精神的に疲労した。
食欲も失せてしまった。
……とは言え、
目の前の配膳を片付けなければならない。
用意されていた朝食を食べながら、さっきのミルクの一件を思い出し、一人悶々とする。
あんなことまでして、ミルクを飲ませる必要はあるのだろうか?
そもそも、記録用紙を使って3時間毎に授乳するのも、ずっと疑問だった。
なんというか、卒論研究の実験みたいだ。
記録用紙は、一日終わるごとに、回収される。
もしや本当に研究データとして、使用してたりして。
それはまあ、おいといて、
普通、授乳って、赤ちゃんが欲しがる時に、欲しがる分だけ上げればいいんじゃないのだろうか。
体重を増やすために無理矢理ミルクを与えることが、赤ちゃんに良いことだと、思えない。
低体重出生児は、成人してからメタボになりやすいと、何かで読んだことがある。
それから、脂肪細胞の数は乳幼児期に決まると、テレビで見た記憶がある。
この二つ、関連性がありそう。
つまり、
低体重出生児が将来メタボになりやすいのは、こんなふうに無理矢理ミルクを与えて、無理矢理体重を増やした結果、脂肪細胞の数が急増するからではないだろうか。
なんか、無理矢理ミルクあげたくないな。
でも、「元」中の人の体重が増えなければ、私の入院が長引いてしまう。
それは、非常に困る。
本当に、困る。
悩んでいたら、朝食を完食していた。
なんだかんだで、やっぱりお腹はすいていたのだな、と思った。
「母乳飲むと疲れちゃうみたいで、ミルクの時には全然起きてくれないんです」と反論してみる。
「うん、そうだよね」と助産師さん。
「でも、S(私の苗字)さんの赤ちゃんは、体重増えないと退院できないから、しっかり飲ませないと」
え??
退院できない??
それって、一体どういうこと?
「……退院できないと、どうなるんですか?」
「赤ちゃんは小児科入院で、お母さんは付き添い入院って形で、残ってもらうことになると思う」
「!!!」
ムリ!!
土曜日の退院も果てしなく長いのに、延長入院なんてありえない! マジありえない!!
「母乳がちゃんと飲めてれば、ミルク10mlでもいいんだけど。次の授乳の時、哺乳量測定しようか」
「はい」
早朝から、保育室で助産師さんに見られながら授乳する。
緊張して、上手くいかない。
テストみたいだ。
何で、こんなことしなきゃならないんだろう。
お腹すいた……
掛け時計を見つめる。
午前7時45分。
ベッドに朝食が運ばれている頃。
午前4時くらいから、ずっとお腹が空いていた。
朝食の時間を、今か今かと待っていたのに。
せめて、朝食食べ終えてからにして欲しかった。
…………
イライラする。
そんな中、
「今日、旦那さん帰っちゃうんだっけ?」と助産師さんが尋ねる。
「はい」
「寂しくなっちゃうね~」
「そうですね」
「でも、旦那さんも、ベビーに会えなくなるから寂しいね」
「そうですかね」
「そうだよ~、一番可愛い時だもん。S(私の苗字)さんは、しばらくご実家にいるんだよね」
「はい」
「それがいいね。やっぱり最初は、色々心配だもんね」
たぶん、私の緊張を解こうとして、話しかけてくれているんだと思う。
ありがたいけど、
なんか、イライラする。
なんとなく、『赤ちゃん最優先! お母さんは二の次ね』と念を押されている気がしてしまう。
お腹が空いていると、ネガティブな思考に陥りやすい。
妊娠してから、食に対して、かなり意地汚くなった。
助産師さんに、悪気はない。
ご飯のことは忘れて、違うことを考えなきゃ。
自分に言い聞かせるが、あまり上手くいかない。
イライラが顔に出始める。
「15分くらい吸ったかな。じゃあ体重測ってみようか」
私の表情を見てなのか、丁度時間になっただけなのか、とにもかくにも、授乳終了のOKが出た。
「元」中の人を体重計に乗せる。
緊張。
体重増えてなかったらどうしよう。
正直、母乳が出ているか不安。
助産師さんが私の乳首をつねると、黄色い母乳が出る。
でも、私がやっても、全然出ない。
もし、体重が増えてなかったら、また何かしらの指導が入るに違いない。
ご飯食べたい。
「30gくらい増えてるね。大丈夫、ちゃんと飲めてるよ」
ホッ。
「良かったです。自分で母乳出そうとしても出なかったので、ちょっと不安でした」と愛想笑い。
「それ、押す場所が違うんだよ」
助産師さんが「この辺を、つまむように押してごらん」と乳輪の辺りを指し示す。
その通りやってみると、黄色い母乳がプツプツと出てきた。
素直に感動。
さすがだな、と思う。
最後は、哺乳瓶でミルクを飲ませる。
「母乳はちゃんと出てるけど、体重増やすためにも、30mlくらいミルクを飲ませるようにしてね」と助産師さん。
やれるなら、やっている。
「寝ているのを起こしながら授乳すると、どうしても30~40分くらいかかっちゃうんです。そうするとミルクの時には、くすぐっても起きなくなるんです」
と、また反論。
「おっぱい飲むのは、赤ちゃんにとって、ものすごい運動だからねぇ」と親身に頷く助産師さん。
これなら。と、思っていたことを口にしてみる。
「順番を変えたらダメですか? 先にミルクをあげて、その後母乳……」
「それはダメ!」
否定、早い!
「初乳は赤ちゃんにとって、すごく大事な栄養がいっぱいだから、まずはおっぱいをしっかりあげて。今はおっぱいの量があんまり出なくて不安かもしれないけど、赤ちゃんが吸ってくれる刺激で、どんどん増えていくから、大丈夫」
……なんか、やっぱりズレている。
私はおっぱいの量について、そこまで深刻に悩んでいないんだけどな。
体重増やす話は、既にどっかへ行ってしまってる。
ここの助産師さんたちの最優先事項は「完全母乳育児」なんだ、と改めて思う。
ノルマとか、あったりして。
そうこうしているうちに、「元」中の人は哺乳瓶を突っ込んでも、くすぐっても、全く飲まなくなった。
丁度、10ml飲んだあたり。
ほらね。
「飲まなくなっちゃいました」と私。
すると。
「ああ、寝ちゃったね。ちょっと貸して」
哺乳瓶を受け取った助産師さんが、
「!!」
思いっきり強引に「元」中の人の口の中へ、それを突っ込んだ。
ぐえっっと、「元」中の人の顔が苦しそうに歪む。
苦しくて薄目を開けた「元」中の人が、ミルクを一口。
でも。
「あ、また寝たか」と、助産師さん。
すると。
今度は足の裏を、強く引っ掻いた。
驚いた「元」中の人、薄目を開けてもう一口。
そして、顔を歪めながらまた眠る。
そうやって、眠ろうとする「元」中の人を無理矢理起こしては、ミルクを飲ませていく。
確かに、飲んでいる。
でも……
すごく苦しそう。
たぶん、助産師さんは沢山の新生児を見てきているから、こういうのも日常茶飯事だし、ある程度雑に扱えるのだろうけど……
可哀想で、見ていられない。
結局、助産師さんは、ミルク20mlを飲ませることに成功。
「こうやって、大変だろうけど、頑張って飲ませてね」
そう締めくくり、哺乳量測定&授乳指導が終わった。
「元」中の人を、保育室に残し(沐浴があるので)、部屋に戻る。
疲れた。
胸もヒリヒリするし、授乳も大変だったけど、
苦しそうな「元」中の人を見て、精神的に疲労した。
食欲も失せてしまった。
……とは言え、
目の前の配膳を片付けなければならない。
用意されていた朝食を食べながら、さっきのミルクの一件を思い出し、一人悶々とする。
あんなことまでして、ミルクを飲ませる必要はあるのだろうか?
そもそも、記録用紙を使って3時間毎に授乳するのも、ずっと疑問だった。
なんというか、卒論研究の実験みたいだ。
記録用紙は、一日終わるごとに、回収される。
もしや本当に研究データとして、使用してたりして。
それはまあ、おいといて、
普通、授乳って、赤ちゃんが欲しがる時に、欲しがる分だけ上げればいいんじゃないのだろうか。
体重を増やすために無理矢理ミルクを与えることが、赤ちゃんに良いことだと、思えない。
低体重出生児は、成人してからメタボになりやすいと、何かで読んだことがある。
それから、脂肪細胞の数は乳幼児期に決まると、テレビで見た記憶がある。
この二つ、関連性がありそう。
つまり、
低体重出生児が将来メタボになりやすいのは、こんなふうに無理矢理ミルクを与えて、無理矢理体重を増やした結果、脂肪細胞の数が急増するからではないだろうか。
なんか、無理矢理ミルクあげたくないな。
でも、「元」中の人の体重が増えなければ、私の入院が長引いてしまう。
それは、非常に困る。
本当に、困る。
悩んでいたら、朝食を完食していた。
なんだかんだで、やっぱりお腹はすいていたのだな、と思った。