自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
5月29日(水) その4

 退院講習は、退院後の過ごし方と育児のレクチャー、これから起こる身体の変化などの説明だった。

 退院後一週間は布団を敷いたまま、寝たきりで赤ちゃんと過ごすこと、マタニティブルーがあること、抜け毛に脱肛、尿漏れの説明。そして、体重コントロール。

 聞いているだけで、ブルーになる。

 でもこれは、出産した綺麗な女優さんたちもみんな経験しているんだ! と、心の中でおかしな説得をする。



「体重は、母乳育児で自然と落ちて行くから大丈夫」と助産師さん。


 そういうもんか、と頷く。


 

「ただし、伸びた皮はなかなか元に戻らないよ」



 え??


 なにそれ? 聞いてないよ!!

 うそでしょ??



「本当にね、なっかなか、戻らないから」と、やけに強調する助産師さんに、呆然。




 そして、酷く動揺。




 なぜなら……


 シャワーを浴びる時、なるべく見ないようにしていたお腹。


 皮が、明らかにたるんでいるのだ。

 わりと自慢だったウエストラインのくびれに、だるんとした皮が張り付いて、痩せこけたおばあさんに見える。

 脂肪はあまり付いていない。でも、それが返ってダルダル加減を強調させている。

 しかも、おへその形も変。



 最初にシャワー室で見たとき、本気でショックだった。


 
 だけど、これは一時的で、すぐに治るんだ。と自分に言い聞かせてきたのに。



 そういえば、母も「出産したらお腹の脂肪が取れなくなった」と話していた。



 嫌だ!




 こんなお腹のままじゃ、ビキニ着れないじゃん!!

 もう、本当に泣きたい。




 沢山の衝撃を受け、退院講習が終わった。



 辛い。


 ボディメイキングは、人より頑張ってきたつもり。

 同世代の中では、わりといい線いってると、唯一、ほんのちょっとだけ自慢だったのに。


 その、ほんのちょっとの自慢すらなくなったら、もっとネガティブになってしまいそう。


 夕方には夫が帰ってしまうのに、と、気持ちがどんどん落ち込む。






「あ、S(私の苗字)さんは、個室希望だったよね?」と助産師さんが私を呼び止めた。

「……はい」

「今日、一部屋個室が空く予定なんだけど、移る?」



「え? …………あ、はい! ぜひ!!」

「じゃあ、夕方頃移動だから、荷物まとめておいて」




 ‥‥‥‥‥‥




 嬉しい~~~~!!

 


 小踊りしたい! しないけど。


 さっきまでのブルーな気分が、一気に解消!




 個室は、無理だろうなと諦めていた。



 出産後に渡された、バースプランのアンケートでも、満足度60%の理由の一つに『個室希望が叶わなかったから』と書いた。

 後で書き直そう。


 ちなみに、もうひとつの理由として『会陰切開をされたから』と記入した。

 やっぱり、そこはどうしてもショックだったから。



 母乳ゴリ押しの件は、クレーマーになりそうなので、記入を見送った。




 とにかく、すっかり諦めていた分、嬉しさ100倍!



 捨てる神あれば拾う神あり……かな?





 個室になれば、他の赤ちゃんの泣き声に悩まされる必要がない!

 この人は、全然泣かないし。

 今夜こそ、絶対に眠れる!!



 トイレや洗面所も、遠慮なく自由に使える!

 便秘も解消できるかも。



 嬉しい!!!


 夫はいなくなってしまうけど、この先の入院生活、少しは楽になりそうだ。




 こうなってくると、考え方もポジティブ方向へ。



 お腹の皮も、全然大丈夫な気がしてくる。


 だって、出産した綺麗な女優さんたちは、ちゃんと身体のラインも元に戻っている。

 

 ちょっと高めの補正下着とかつければ、治るに違いない。

 産後は骨盤矯正に最適で、やり方次第では以前よりも綺麗になれると、雑誌に書いてあった。




 どうせなら、この機会に頑張ろう!





 嬉しいと、夫に会いたくなる。

 早く、来ないかな。














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