自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記

四日目

5月30日(木)


 ようやく外が明るみ、朝が訪れる。

 もう、ヘトヘト。



 蓮は、授乳と授乳の丁度合間に、夜泣きを続けた。

 蓮の泣き声は、他の赤ちゃんよりも2段階くらい高音で、よく響く。


 あの助産師さんがまた来るかも。と、考えると、うかうか寝ていられない。


 「い」と聞こえた瞬間に飛び起きて、蓮をカートから素早く取り出し、揺らしたり、母乳をあげたりしてあやす。


 泣いている時間は、たぶん5~10分程度。

 大部屋の赤ちゃんたちに比べれば、短い方だと思う。



 でも、3時間毎の授乳の合間に泣くので、全く熟睡できなかった。




 辛いなんてもんじゃない。




 今度こそ眠れると喜んでいた分、ショックが大きすぎる。





 朝方にやっとウンチが出て、それからは急に静かになった。

 やっぱり、ウンチだったんだ! と、怒り心頭。


 あの哺乳量測定さえなければ、絶対に眠れた。




 イライラが収まらない。




 朝6時すぎ、夫から「どう?」と電話があった。


 昨日の一件をイライラしながら、説明する。

『その人、仕事の疲れをぶつけたんだよ。M(私)は入院中、オレが見てても反抗しなさそうな、気弱い人を演じてたからなぁ。そしたら、予想に反してMが怒ったから、焦って取り繕ったんだと思うよ。そういうタイプはプライドが高いから、上司に注意されるのが一番効くよ。産後は気が立っていることくらい助産師さんなら知ってるはずだし、その態度はおかしいよ。苦情言うべきじゃない?』

「でも、苦情言うのは私でしょ? そんなことしたら、今日含めてまだ3日も入院が残っているのに、居づらくなるもん。居づらくなって辛いのは私だもん」

 つい、口調が強くなる。



『じゃあ、どうするの? 泣き寝入りする? するなら、するで、もう昨日のことは忘れるしかないよ』

 夫の声も低くなる。


「なんで、そんな突き放した言い方するの??」

 喧嘩腰の私。


『しょうがないじゃん、どっちかしか方法はないんだよ』

 夫も応戦。




「当事者じゃないから、そんな簡単に言えるんだよ!!」

 蓮が起きない程度に、声を荒げる。

 大声すら出せないのか、と、またイライラ。


 完璧、夫に八つ当たりしている。

 分かっていても、抑えられない。



『ごめんねっ! 大変なのはM(私)だよねっ! オレは何にもできないもんねっ!』

「怒りながら謝んないでよ!!」


『じゃあ、どうしたらいいの? 今から秋田に行けばいい?』

「出来ないこと言わないでよ! 話しているとイライラするから切る。じゃあね!」


 一方的に電話を切って、携帯を壊れない程度にベッドへ投げ捨ててやった。




 そして、




 一方的に切っておきながら、夫から電話が掛かってこないことに、またイライラ。




 もう、わけがわからない。

 ちょっとしたことで、すぐにイライラする。



 気持ちを落ち着かせようと、何度も深呼吸。

 全く効果なし。

 逆にイライラするくらいだ。


 長らく続く不眠のせいで、感情のコントロールが上手くいかない。

 元々、そんなに得意ではないけれど。




 あと3日。




 あと3日もある。


 乗り切れる自信がない。



 早く退院したい。








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