自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
5月30日(木) その3


「失礼します」

 看護学生さんが入ってきた。

 私の体温と血圧測定が、彼女の実習科目の一つ。


「昨日は眠れましたか?」「あんまり」と苦笑。

「そうですか~。子供を産んだ私の姉が、育児で一番辛かったのは寝不足だって言ってました」

 まさしく、その通りです。



「血圧、今日も低めですね。S(私の苗字)さんの血液検査の結果、貧血が出ていたので、たぶん難しいとは思いますが、できるだけ休んでくださいね」

 苦笑しながら「はい」と応える。

 ホント、休めるなら休みたい。



「それから、蓮ちゃん、黄疸も無事クリアしました! 低体重で生まれた赤ちゃんは、わりと引っかかるのにすごいですね!!」「……そうですか」

 これで、全ての小児入院がなくなってしまった。



 ……残念だ。



「あとですね。今日の沐浴レッスンなんですけど、なんと、モデルは蓮ちゃんです!!」

「え? そうなんですか?」


 今日は午前中に、沐浴レッスンがある。学生さんの話によれば、レッスン内容は、助産師さんが実際に赤ちゃんを沐浴させ、それを数名のお母さんたちと見学するらしい。

「それを聞いて、なんか私、蓮ちゃんのお母さんじゃないですけど、勝手に嬉しくなってしまって」

 いい人だな。とつくづく思う。


 みんなの前で、蓮が沐浴するのか……

「ちょっと、照れますね」

 微妙に……嬉しいかも。




「ではまた、沐浴レッスンが始まる前に呼びに来ますね」





 看護学生さんがいなくなり、しばらくベッドで休む。

 そうして、ウトウトとまどろんでいると、


「失礼します」

 ぞろぞろ。


 恒例の、先生のご回診の時間だ。

 入院の手引きにも、『午前中は先生の回診があるため、ベッドから離れないようにしてください』と注意事項が載っているくらい。

 それほど、大切な行事なのだ。




 回診には、お医者さん一人と、助産師さん3名がついてくる。

 まるで、白い巨塔みたいだなと、毎回思う。

 ただし、かなりスケールが小さい。

 

 そして始まる、ありがたい回診。

「体調はどうですか」とドクター。

「お尻が痛いのと、手足がむくんでいます」と私。

 ドクターの後ろで、助産師さんたちが意味不明の微笑を浮かべている。


「ああ、むくんでいるね。クッションを使って、足を心臓より上に上げるようにしてください」とドクター。

「はい」と私。


 
 そして、ぞろぞろ帰っていく。







 ‥‥‥‥‥‥





 絶対、無駄な時間だよね、これ!!


 お願いだから、寝かせて欲しい。 





 

 そうこうしているうちに、「沐浴レッスン行きましょう」と看護学生さんが戻ってきた。



 ホント、無駄に慌ただしい。


 

 





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