自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
5月30日(木) その5


 蓮に、母乳とミルクを与えた後、夫に電話する。



 まずは、お互いに謝って仲直り。



「さっき蓮がね、」と、沐浴レッスンの経緯を話す。

 夫の笑い声を聞くうちに、昨夜の出来事も、全然大したことじゃなかった気がしてきた。

 と、同時に、夫がとても恋しくなる。



 離れてから、たった1日しか経ってない。

 なのに、一週間会っていない気がする。


 それくらい、ここの入院生活はヘビーで密度が濃くて、時間の経過が恐ろしくゆっくりだ。



 夫は、私が「元」中の人を「蓮」と当たり前のように呼んでいることに、すごく驚いていた。


『妊娠発覚からつい昨日まで、ずっと「中の人」だったのに、たった一夜ですっかり「蓮」に馴染んでる!! オレなんか、M(私)が「蓮」って呼ぶのを聞くだけで、恥ずかしいのに』



 確かに、諸々たった一夜の出来事。

 でも、そのたった一夜が、私にとっては一週間くらいの長さなのだ。

 その長~い時間を、ほぼ蓮と二人きりで過ごしている。


 そりゃあ、名前くらい呼べるようにもなる。




 そういえば、妊娠前までは、一年があっという間に過ぎていた。



 それが、妊娠してから、なかなか1週間が過ぎなくなった。

 そして、死ぬほど長い出産がやっと終わって、一息付く間もなく、過酷な入院が始まった。


 出産から、まだ一週間経っていないなんて、信じられない。


 本気で、本当に、びっくりするくらい、めちゃめちゃ、1日が遅い。




 この入院生活を無事に終えられたら、私はきっと、ひと皮剥けているに違いない。


 悟りくらい、開いているかもしれない。



 寝不足過ぎて、一旦考え始めると、どんどんおかしな方向へ思考がシフトしていく。



 とりあえず、さっきの授乳記録を書かなきゃ。



 バインダーの記録用紙を何気なく捲って、青ざめた。





 バースプランについてのアンケートが……





 消えている。。。












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