自己チューなアラサー転勤族主婦の妊娠日記
12月31日(月)

 とうとう今年もあとわずか。


 今日は浅虫温泉の老舗旅館に、夫の家族と宿泊する。

 元旦の夕方には私の実家へ戻ることになっていたので、旅館へ行く前に夫の祖母さんに挨拶へ行くことになった。

 旅館に泊めてもらってすぐ帰るのはあまりにも失礼じゃないかな、と私の実家へは2日にしようと11月に切符を買うとき夫と話した。

 夫は「体調もそんなに良くないんだから、そんなの気にしなくていい」と、元旦の青森-秋田行きの特急列車の、しかもグリーン車を購入してくれた。

 朝、「忙しなくてすみません」と頭を下げると、ご両親は「全然気にしなくていい」と笑ってくれた。


 本当に毎回感謝しっぱなしだ。


 皆、良い意味での距離感を持った接し方をしてくれる。

 私はあまり社交的な方ではないから、田舎にありがちな「我が家みたいに思ってね」とか「本当の娘だと思ってるから言いたいことは言い合いましょう」のような関係は苦手。
 夫のご両親は他人行儀すぎず、だからと言って馴れ馴れしい(?)感じでもなく、上品に仲良くしてくれる。それがとても心地よい。


 お母さんは青森の人だけど、常にオシャレに気を配っていて、ロクシタン等のボディクリームも好きで、年上の女性としても尊敬している。


 二人の祖母に会う前に、夫が「実はまだMの両親にも妊娠のことを言ってないから、おばあちゃん達には内緒にしていて欲しい」と皆に説明する。

 実はこれが結構心配だった。


 夫の話では「お父さんの方のおばあちゃんが施設に入ったばっかりだから、お父さんは『おばあちゃんだけには言いたい』って言い張るかも」と不安がっていた。




「ああ、いいよいいよ」




 あっさり、二つ返事。

 本当に、素敵なご両親だ。




 二人のおばあちゃんに挨拶をして、いよいよ旅館へ。


 なんと、棟方志功や、明治天皇とその重鎮の方々が宿泊したこともある由緒正しい旅館だった。

 絶対に高い。また感謝。


 部屋は、お父さんお母さん弟さんの部屋と、私と夫の部屋の二部屋を予約してくれている。毎年部屋を分けてくれる気遣いにも感謝。


 夕食の前に楽しみにしていたお風呂へ。


 いい感じに古い。

 特に岩造りの露天風呂は雪もちらちらと降り注ぎ、雰囲気がある。とても気持ち良い。いろんな疲れが一気に消え去った。


 夕食は夫のご両親たちのお部屋でゆっくり頂く。

 すき焼き、お刺身、アワビのバターステーキ、カニ、おせちの盛り合わせ、茶碗蒸し……。

 絢爛豪華だ。

「私も食べきれないから、絶対に無理しないでね」とお母さんが添えてくれる。


 テレビを見ながら談笑して、ゆったりとご馳走を食べ、頃合を見計らって自分たちの部屋へ戻った。

「お腹いっぱいだぁ」と二人でテレビを流しつつ布団の上でくつろぐ。

 あっという間に眠気が襲ってくる。


 ふと気がつくと、2013年に突入していた。


「初詣行こうか」と夫。

 深夜1時半、厚着をしてしんとした廊下を歩き、ロビーへと向かう。







 真っ暗。






 玄関はカーテンが敷かれ、固く閉じられていた。今までの旅館は初詣の時間に甘酒のサービスなどの催しをしていたけれど、老舗旅館は静かに過ごすようだった。

『御用の際は、当直室へ』とあったので、夫が当直室のドアをノックするも、返事がない。


 諦めて温泉に入って寝ることにした。


 24時間の温泉も、電気が少し消されていて誰もいない。


 しんとした露天風呂に浸かっていると様々な偉人の霊が現れそうで、そわそわと長風呂もできずに上がった。


 夫は「露天に入っていたらいきなり電気が消えた」と怯えていてちょっと可笑しかった。



 なにはともあれ、ふたり揃ってふかふかの布団にくるまり、しばし就寝。



 明日(今日)も忙しい。


 良い夢が見られますように。





























































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