結婚白書Ⅱ 【恋する理由】
「工藤君 足の痛みも取れたし 車の運転もできそう 今までありがとう
本当に助かったわ
でね お礼に食事をご馳走したいんだけど・・・
玲子先生も一緒なの どうかな?」
帰りの車の中で 彼にこう切り出した
お礼をしたい気持ちは本当
でも 一対一で食事をするはためらわれた
玲子先生にもお世話になったし 彼女が一緒なら工藤君も了解しやすいだろう
そう思った
「いいんですか? じゃあ ご馳走になります」
今まで見せたことのないような笑顔と一緒に 素直な答えが返ってきた
そんな顔しないでよ ドキドキするじゃないの・・・
私って やっぱり変だ こんな若い子相手に冷静さを失いそうだ
工藤君の酒は陽気だった
普段 あまりしゃべらないのに 今夜は明るく饒舌だった
彼は もともと玲子先生のことは ”玲子さん” そう呼んでいたが
いつの間にか私のことも ”円華さん” と呼んでいる
「円華さん 車から降りるとき手を出すと照れるんですよ
それが 毎日 毎日
”いい加減慣れてください”と言っても 最後まで もじもじしてて
これがね また可愛かったんだなぁ」
タバコをくわえ 時々グラスを口に運びながら陽気にしゃべる
「工藤君 玲子さんにバラしたわね 覚えておきなさい!」
私も気分がいい 年の差なんて関係なかった
今夜は 久しぶりに楽しい酒が味わえた