ふたりぼっち兄弟―Restart―【BL寄り】
「ぷはは。素直で結構。やっぱ坊主には弱ぇな。兄ちゃん」
「くそ。那智を使いやがって……覚えてろよ、益田」
「大人ってのはずるい生き物さ。ガキみてぇな態度を取るお前さんが悪い。坊主、こんな兄ちゃんをどう思う?」
飴玉を口に入れていると、益田警部から話を振られた。
どう思うって言われても……。
おれは子どものように不機嫌になっている兄さまを見つめ、見つめて、ひとつ笑い、素直に感想を述べる。
「かわいぃ、と思ぅ」
「ぶはっ!」
「は?」
途端に益田警部が噴き出し、飴玉の包みを開けていた兄さまがおれを凝視してきた。
いや、本当に可愛いと思うよ。
兄さまはカッコイイし頼れるところが目立つけど、たまには子どもらしいところもある。それを知っていると、かわいいと思えて仕方がない。うん、すごくかわいい。子どもっぽい兄さまもおれは大好きだ。不機嫌になっても大好きだよ!
その意味合いを込めて「かわいい」と言ったんだけど、兄さまは顔を引き攣らせながら、おれの頬を引っ張ってきた。いひゃい!
「那智クン。いまなんて?」
「かわいい」
「誰が?」
「兄さまぁいひゃひゃひゃ」
兄さまは本気で頬を引っ張ってくる。なんで? なんで?!
「またお前はそうやって俺の兄心を傷つけやがる! かわいいはねえだろ。かわいいは!」
「兄さまはかわひぃでふぅ」
「なーちー。まだ言うか」
「いひゃひゃ。兄ひゃま、おえ、うそいっへない」
「今のはうそのが嬉しいっつーの!」
「くくっ。そうか、可愛いかっ、可愛いねっ。良かったな兄ちゃんっ、かわいいってよ」
「てめっ、何笑ってやがる」
「照れるな照れるな。おいちゃんも兄ちゃんが不機嫌な態度を取る度、可愛いと思ってやっから。くくっ、可愛いか。坊主に一本取られたな」
「ぶっ殺すぞてめぇ!」
ひぃひぃ大笑いする益田警部と食い下がる兄さまは、本当に反抗期を迎えた息子をからかう父親の図だと思う。
兄さまをあそこまでからかえるのは益田警部だけだろうな。
他の警察関係者は、兄さまのことをどこか厄介者の問題児だと見がちだから。兄さま自身もそっちの扱いの方に慣れているからこそ、益田警部の接し方に対応しきれない部分が多いんだと思う。
(益田警部は本当に変わった大人だ)
良い人ってああいう人を言うんだろうな。