ふたりぼっち兄弟―Restart―【BL寄り】
兄さまが柴木刑事から今後の新居と警備配置、支援団体の説明を受けている間も、益田警部は手持ち無沙汰になったおれに話し掛けてくれた。
「坊主。新しい生活が始まっても、変わらず兄ちゃんを支えてやるんだぞ。頑張り屋の兄ちゃんひとりじゃあ限界がある」
そして、その話題は兄さまの努力を認めている内容であり、兄さま自身の心配だった。
「坊主が入院している間、兄ちゃんはお前さんと安全に暮らすために、大人でも頭を抱えるような書類の手続きをこなしていた。支援団体の助力もあったが、できるだけ自分の中で完結できるように、どうにかしようと努力していた。まだまだ遊び盛りだろうに、自分のことはそっちのけ。偉いよ、坊主の兄ちゃんは」
自分にできる範囲はすべてこなそうとしていた。
あの姿勢は見習いたい、と益田警部は兄さまを褒める一方で、苦笑いをひとつ零す。
「兄ちゃんがもっと周りに心を開けるようになったら、努力している面も大きく評価される。それは確かなのにな」
性格に難があるせいで、周りから距離を置かれがちだと益田警部。
それはとても勿体無いと語り、おれに「兄ちゃんに教えてやってほしい」と微笑む。
「頼れる大人と出逢えたら、年相応のガキになっていいんだって。兄ちゃんは大人に頼ることを知らなさすぎる」
「……けーぶ……兄さま……どう……思ってるの?」
「そりゃもう、クソ生意気なガキと思ってるよ。からかい甲斐のある可愛いガキだ」
くつくつと喉を鳴らすように笑い、優しい眼でおれにこう言った。
「坊主、お前さんは兄ちゃんの良心だ。兄ちゃんが間違いを犯しそうになった時は、お前さんが止めてくれ――大好きな兄ちゃんを誤った道に進ませてくれるな。いいな?」