ふたりぼっち兄弟―Restart―【BL寄り】


「怖いと思ったら、蹴り飛ばせよ那智。手加減なしでお前の体を触る。鳥井と何が違うか、ちゃんと感じておけ」


 え。
 鎖骨から目を離した刹那、兄さまがおれの服をたくし上げてきた。
 左手で脇腹を触り、右手でジーパンのカギホックを外し、耳に寄せていた口は再び唇に戻ってきた。

 満目いっぱいに兄さまが広がる中、口の中に舌が滑り込んでくる。舌を吸われる。脇腹をくすぐられる。下肢を撫でられて体がしなる。本当の意味であの時と同じ状況となった。

(お、おなじ状況なのにっ)

 意味が分からないくらい感じる。ああ、感じてしまう。

 恐怖も吐き気も何も無い。
 他人じゃ得られなかった大きな快感が、喜びが、羞恥心が、そこにはある。
 相手は血の繋がった兄なのに、ううん、兄だからこそ、おれはここまで感じてしまうんだ。

(無理。頭がおかしくなりそう。これは本当に無理。兄さまと鳥井さんじゃ全然違う)

 おれは無我夢中で兄さまにしがみつき、意味のなさない言葉を紡ぎ続ける。声を抑えることなんてもう無理だった。

「お前のそんな顔、初めて見た。那智、かわいいな。すげぇかわいい」

 対照的に兄さまは始終、愉しげに笑っていた。
 病院で触られていた行為は、本当にセーブしていたようで、手加減なしに触った。触り続けた。

(なにもかんがえられない)

 気づいたら、頭がグチャグチャになっていた。もう為すがままだった。
 なきじゃくるおれを腕に抱え、兄さまはしあわせそうにおれと額を合わせて、眦を和らげる。


「そうやって、いつも兄さまを求めて狂ってろ。お前はその姿が本当にかわいい――那智。お前は兄さまの傍にいるだけでいい。あとは俺が上手くやってやっから。俺の弟はもう誰に渡さねえ」


< 245 / 293 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop