ふたりぼっち兄弟―Restart―【BL寄り】
「怖いと思ったら、蹴り飛ばせよ那智。手加減なしでお前の体を触る。鳥井と何が違うか、ちゃんと感じておけ」
え。
鎖骨から目を離した刹那、兄さまがおれの服をたくし上げてきた。
左手で脇腹を触り、右手でジーパンのカギホックを外し、耳に寄せていた口は再び唇に戻ってきた。
満目いっぱいに兄さまが広がる中、口の中に舌が滑り込んでくる。舌を吸われる。脇腹をくすぐられる。下肢を撫でられて体がしなる。本当の意味であの時と同じ状況となった。
(お、おなじ状況なのにっ)
意味が分からないくらい感じる。ああ、感じてしまう。
恐怖も吐き気も何も無い。
他人じゃ得られなかった大きな快感が、喜びが、羞恥心が、そこにはある。
相手は血の繋がった兄なのに、ううん、兄だからこそ、おれはここまで感じてしまうんだ。
(無理。頭がおかしくなりそう。これは本当に無理。兄さまと鳥井さんじゃ全然違う)
おれは無我夢中で兄さまにしがみつき、意味のなさない言葉を紡ぎ続ける。声を抑えることなんてもう無理だった。
「お前のそんな顔、初めて見た。那智、かわいいな。すげぇかわいい」
対照的に兄さまは始終、愉しげに笑っていた。
病院で触られていた行為は、本当にセーブしていたようで、手加減なしに触った。触り続けた。
(なにもかんがえられない)
気づいたら、頭がグチャグチャになっていた。もう為すがままだった。
なきじゃくるおれを腕に抱え、兄さまはしあわせそうにおれと額を合わせて、眦を和らげる。
「そうやって、いつも兄さまを求めて狂ってろ。お前はその姿が本当にかわいい――那智。お前は兄さまの傍にいるだけでいい。あとは俺が上手くやってやっから。俺の弟はもう誰に渡さねえ」