ふたりぼっち兄弟―Restart―【BL寄り】


 だから兄さまに言う。

「兄さまはもっとわがままになって良いですからね。弟のためにいっぱい我慢した分、今度はわがままになってほしい。それがおれの願いです」

 おれを見上げる兄さまにひとつ笑い、「いいよ」と何か言われる前に返事する。
 兄さまがおれに対して行動を起こしたいのは何となく見て取れる。
 だけど、いざとなると兄心が先だって遠慮する兄さまだから……先に言っておかないと。べつに気にしなくていいよ。ここには兄弟以外誰もいないんだからって。

「ああ、でもお腹が減ったからご飯を食べてからでもいいですか? できれば、パジャマも着たいところですね。そろそろ下着だけじゃ風邪ひきそう! だけど腰が痛いから着させてほしいです。お世話になります兄さま」

 兄さまに続けざまに尋ねると「お前には敵わねえな」と笑いを返された。

 それはいつも見る、大好きな兄さまだった。


 はてさて。
 夕飯は引っ越してきたばかりだからカップ麺。
 久しぶりのラーメンに涙が出るほど舌鼓を打ってしまった。それこそ兄さまが目を瞠るほどの勢いでラーメンを平らげた。病院食と違って味が濃い! 体に悪そうな味がする! それがおいしい! とてもおいしいんだ!

「兄さま、もう一個食べても良いですか? カップ麺」
「……食うの早っ。お前、ぜってぇ噛んで食ってねえだろ」
「おかわりしてこよーっと」
「ばっ、ばか! ダメに決まってるだろ。兄さまの半分やっからこれで勘弁しろ」

 食後はテレビを観ながら、兄さまにチョーカーを付けてもらった。
 ゴテゴテの首輪みたいなチョーカーじゃなくて、お洒落さんが付けそうなシンプルなレザーチョーカー。金属製のタグ付きだった。
 曰く、それは退院祝いらしく、お父さんから引っ掻かれた傷痕や銃の擦過射創(さっかしゃそう)痕を、少しでもアクセサリーで誤魔化せればいい、と兄さまなりに考えたものらしい。

 意図は別のところにあると気づいていたけど、おれは素直に兄さまの贈り物を受け取った。
 ちなみにレザーチョーカーは兄さまとお揃い。兄さまが付け終わると、おれが兄さまの首にチョーカーを付けてあげた。こっちは金属製のタグが付いていなかったけど、チョーカー自体はお揃い。それだけでおれは大満足だった。大好きな人とお揃いってやっぱり嬉しいものだよね。

 チョーカーを付け終わると、兄さまはおれに「護身用だ」と言って、真新しい折り畳み式のナイフを手渡してきた。

 さすがにこれには困惑してしまったけど、兄さまはおれに向かって真剣に伝えた。
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