ふたりぼっち兄弟―Restart―【BL寄り】
初めて福島と気が合った。
福島にとっては復讐まがいの行動だろうが、俺にとってもそれは同じことが言える。
偉そうな顔が青褪めていくなんざ最高の景色だ。高校時代、あいつを甚振った記憶がよみがえってくるぜ。それまで俺達を放っておくだけ放っておいた親父。時に暴力を振るわれることもあった、あの親父に下剋上をかましてやった爽快感は今も忘れねえ。
あれがまた味わえるのなら、彼氏ヅラしてやってもいい。
「あんたが彼氏を演じてくれたら、お金のことも、チェリー・チェリー・ボーイのこともゲロってくれるかもしれない」
福島がハンドルを右に切る。
向かう先は警察署のようだ。見慣れた交差点が目的地を教えてくれる。
「チェリー・チェリー・ボーイはともかく、金はサツに先手を打たれるかもしれねえぜ?」
「動かなきゃ情報はゼロ。少しは博打をしないとね」
「言うじゃん」
「あんただって、情報はほしいところでしょ。今日集まったのはそのためなんだし」
煙草の灰を窓の外に落とす。
留置場の仕組みなんざ分からねえが、面会時間は15分程度だったか。確か。
警察署にあるはずだから、事前に益田に声を掛けておけば、もう少し時間を延ばせるかもしれねえな。
ただひとつ懸念がある。
「親父をどこまで騙せるかが勝負の鍵だな。あいつは俺の弟に対する気持ちを知っている」
「あんたの弱点が那智くんだってこともバレバレでしょうしね」
「俺が他人に興味がねえことは十分に知ってやがるからな。ゲロってもらうには、それなりに追い詰めないと話にならねえ」
「カレカノを演じるだけじゃダメかしら。結構なダメージを受けていたけど」
「ダメージは受けるだろうが」
それだけじゃ、あいつの口は割れねえ気がする。
ああ見えて、図太い神経を持っている男だから、ダメージを受けても時間が経てばケロッと回復しそうだ。見せつけで福島に手を出してもいいが、想像しただけで無理。那智以外の人間に触ったら俺が吐く。
となると、んー、カレカノごっこ遊びをちと過激にするか。
俺は福島に即席で思いついた過激版カレカノごっこ遊びの内容を伝える。
最後まで聞き終わった福島の目は、限りなく冷たいものだったが、俺は口角をつり上げて煙草を銜えなおす。
「親父を追い詰めるためだ。ちったぁ我慢しろよ。俺もテメェの案を呑んで彼氏ヅラしてやるんだからさ」