ふたりぼっち兄弟―Restart―【BL寄り】


 懸念した俺はそれから三日間、警察署へ赴いて相談を続けた。

 警察なんざクソだと思っているし、自分で出来る範囲のことはするつもりだが、プロに頼るのも一つの手だと考えている。
 まあ、向こうは俺と那智が考えた悪戯、もしくは那智の同級生が起こすイジメなんじゃないかと考えているらしく、あんまり取り合ってくれなかった。吐き気がするほど惨敗だ、惨敗。

 警察がこんな対応なんて、ストーカー被害に遭っている世の女性は大変だな。ガチで同情するぞ。
 俺達の場合、相談者が中学生の少年だから、適当にあしらわれているのかしれねぇが。


 さて、どうしたものか。

 今のところ、俺が大学やバイトへ行っている間、那智は身の安全のために家で留守番をしている。
 誰が来ても鍵は開けるなと行っているものの、俺達の住む部屋は一階。窓を割って侵入することも、なきにしもあらず。

(追い駆け回されることは、あれっきりだったが油断はできねえ)

 那智も外に出て気晴らしをしたいだろう。

(あいつを閉じ込め続けることは簡単だが正直、気が進まない)

 俺は那智に他人を信じるな、と強く訴えている反面、行動範囲を狭めたいとは思っていない。
 那智が買い物に行きたいなら、自由に行ってもらって構わないし、図書館で勉強したいなら行って来いと背中を押す。

 説得力に欠けていると思うが、これは、まぎれもなく本音だ。

(まあ。他人に奪われるくらいなら、いつまでも部屋に閉じ込めるけど)

 矛盾する想いに苦笑してしまう。
 俺の願いは、那智とふたりで幸せに生き続けること。ただ、それだけなんだけどな。
 那智が外の世界に目を向ける度に、ひやひやしたり、はらはらしたり、もしかすると……と、最悪なことを思って怯えてしまう。

 俺を慕っている弟のことを信じていないわけじゃないんだが、あいつは、まだ精神的に幼い。外の世界への魅力に惑わされることも一杯だろう。
 いつか、俺の傍にいることよりも楽しい世界を知ってしまうかもしれない。それが怖いんだ。俺を置いて行くことが、すごく怖い。


 閑話休題。
 その日も、那智を連れて警察署に赴いた俺は玉砕した結果に業を煮やしていた。相手にするのも面倒になっているようで、受付に行くや弁護士の相談を強く勧められる。

 だからイジメじゃねーって言っているのに。

 手前でどうにかしようにも、玄関に隠しカメラを付けることくらいしか思いつかない。だからプロを頼ろうとしたら、これだ。

 那智はホトホト嫌気が差しているようで、「兄さま。我慢しますよ」と言って、警察署に行きたがらなくなってしまった。
 俺と同じように警察嫌いになりつつあるようだ。

「どうせ、今日も出掛けたところを撮られるんですよ。好きにしてくださいってカンジです。一枚三千円で売りつけてやります」

 しかも、やさぐれてしまう始末。
 社会の秩序を守るべきオトナの怠慢なところに嫌悪しているようだ。同じ気持ちになってくれるのは、たぶん喜ぶべきところなんだろう。が、那智の心を傷付けている現状にはいただけねぇな。
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