本能で恋を
本能…
ある日の昼休み。
「愛歌。これ、保健室に持って行けって、担任が」
セナが机に置いたのは、黒くて分厚いファイル。
多分、生徒の健康状態やら何やらの情報が入っているのだろう。
クラス委員長をしている私には、こうやって担任から雑用を押し付けられる時がある。
私は溜め息を一つ吐いて、立ち上がった。
とぼとぼと歩きながら保健室に着いて、ドアを開ける。
こちらに背を向けて、机に向かっている先生を見て、近づきながら「先生」と呼ぶ。
すると、ビクッと肩を震わせた先生が、私にバッと振り向いた。
その先生の目には涙が溜まっていた……
「…先…生…?」
まさか泣いていたとは思わなかったので、唖然とする。