本能で恋を
『結婚』なんて、母親同士で盛り上がって膨らんだ願望だから、聞き流す程度に聞いていた。
フッと写真の中で愛歌が着ている制服に目が行く。
この制服は、俺と同じ駅にある高校だ…駅で毎日この制服を見掛ける。
へー意外と近いんだ…
俺が愛歌について最初に知った情報はそれだけだった。
気恥ずかしい年だし、
それ以上愛歌について聞いて、興味があるって思われるのも嫌だった。
次の日から、俺は学校のある駅に着くと、あの高校の制服を見つけては目で追う毎日だった。
偶然で良いから、写真の中の愛歌が動いて笑うところを見てみたかった。
ある日…とうとう愛歌を見つけた。
動く愛歌…
しかし彼女は、ただ前を見て、写真と同じ無表情で歩く……
愛歌の声が聞いてみたい。
顔を崩した愛歌をみたい。
気付けばそれは、一目惚れだった。