本能で恋を
「桜木~!」
教室内に響く大きな声で呼ばれて振り向けば、
クラスメートの男子が立っていた。
「田中君…何?」
私が答えれば田中君はニコッと笑う。
爽やかそうな彼は、バスケ部に入っていて、学年の中でも運動神経がダントツに良いらしい。しかも爽やかな顔立ちが人気だとか。
もうそろそろある体育祭では、彼に充分に活躍して貰う予定だ。
「あ~『田中』だとこのクラスもう1人居るから、修(しゅう)って呼んでよ!皆そう呼んでるし!!」
そう、クラスには「田中」が2人居るんだ。用事の時は2人とも振り返ってしまうから困っている。
「し…修君ね…」
あまりにもフレンドリーに話す彼に、若干引き気味になっていると、
「あ~君とかいらないいらない!『修』がいい」
と、ズイッと顔を近づけて話すから、思わず顔を手で押しやった。