本能で恋を



「……ちっ…じゃあセナ、私先に帰るから」


舌打ちして教室から出て行く私を、セナは私と逆で嬉しそうな顔で見送っていた。



足早に下駄箱から外へ出ると、以前見た光景……女子が集まって門の方を見つめている……




それが嫌でドンドンと前へ進む。


………見ないでよ。
葉月君を見ないで……


そんな、変な感情が口から出そうになる。




「あ…来た」


………あ…来たじゃねえよ!

と言いたい気持ちを不機嫌な顔で示す。


どんなに不機嫌な態度でも、皆が見ている中で葉月君が私だけを見て寄ってくるのを見ると、
さっきの感情が薄れていくから不思議だ……



目の前まで来た葉月君のお腹あたりのシャツをちょっと握った。


ちょっと安心……



その時、
「桜木~!」

と、呼ぶ男子の声が響いた。



 
< 51 / 59 >

この作品をシェア

pagetop