本能で恋を
「……ちっ…じゃあセナ、私先に帰るから」
舌打ちして教室から出て行く私を、セナは私と逆で嬉しそうな顔で見送っていた。
足早に下駄箱から外へ出ると、以前見た光景……女子が集まって門の方を見つめている……
それが嫌でドンドンと前へ進む。
………見ないでよ。
葉月君を見ないで……
そんな、変な感情が口から出そうになる。
「あ…来た」
………あ…来たじゃねえよ!
と言いたい気持ちを不機嫌な顔で示す。
どんなに不機嫌な態度でも、皆が見ている中で葉月君が私だけを見て寄ってくるのを見ると、
さっきの感情が薄れていくから不思議だ……
目の前まで来た葉月君のお腹あたりのシャツをちょっと握った。
ちょっと安心……
その時、
「桜木~!」
と、呼ぶ男子の声が響いた。