水面に浮かぶ月
輝きを手に
『club S』を退店してから、3ヶ月後。
透子は念願だった自分の店をオープンさせた。
『Club Brilliance』
強い光輝を放つ店になるように。
この街の夜を明るく照らす存在になるように。
「透子ママ。これ、今日の売上記録です」
「ありがとう、久世くん」
久世は『JEWEL』時代に知り合った黒服で、今や透子の右腕だ。
人当たりがよく、好感度もあり、さらには場の流れを読んで動くことに非常に長けている。
だから透子は、久世に、ホステスの管理や店の掃除などの雑務に加え、キャッシャーまで任せている。
「ママの人気もさることながら、キャストの質の高さ。あとは、八木原さんのネームバリューですかね。すごく好調な数字ですよ」
『Club Brilliance』はアットホーム系のクラブだ。
小箱ながらも決して他店に見劣りのない優雅な内装と、それに見合うキャストを揃えた落ち着きのある雰囲気がある。
客層も、透子の馴染みを含め、気品ある人が多い。
「でも、やっぱり一番は久世くんのおかげよ」
確かに、人材選びには手を抜かなかったし、八木原翁の力も大きいと思う。
しかし、店を円滑にまわすためには、優秀な黒服なくしては無理なのだ。
「久世くんが私の誘いに乗ってくれたおかげだわ」
久世は透子に笑みを向ける。
「正直、不安もありました。でも、それ以上に、あなたに賭けてみたかったんです。あなたについて行ったら、すごい景色が見られるんじゃないか、って」