水面に浮かぶ月


とにかくまずは、客を集めるために、広告を打った。

気に入った派遣の子は指名や専属にした。


それだけではなく、キャストたちがより働きやすい環境を作るために、透子は心を砕いてやった。


キャスト同士や、ママとの関係は、接客をする上ではとても重要なことだから。

そこが円滑でなければ、客を満足させられるはずはない。




それが功を奏したのか、『Club Brilliance』は月単位で売上を増やすようになった。




だが、透子はそれで満足しているわけではない。

いつかは、さくらママのように――『club S』のように、高級クラブを出店するための、『Club Brilliance』はその第一歩だと考えている。


さくらママと同じ土俵で、さくらママを追い抜いてこそ、本当にこの街で一番だと認められるのだから。


透子は、久世と一緒に、次から次へと新しい経営戦略を話し合った。

傾向とデータをきちんと出し、緻密に将来へのプランを立てていく。





そんな折りでの出来事だった。





開店を30分前に控えた、午後19時半。

突然、その人は、『Club Brilliance』にやってきた。



「随分と噂になっているみたいだから来てみたけど、思ったより小さな箱なのね。期待して損したわ」


腕を組んで立つマナミ。


どうしてここに。

透子は焦りを顔に出さないことで精一杯だった。



「お久しぶりですね、マナミさん。飲みに来てくださったんですか?」


言葉は柔らかく、でも睨むような目で見た透子。

マナミははっと笑い、
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