水面に浮かぶ月
不吉な足音
シンのことも、優也のことも、ヨシヒサのことも、そして、マナミとやらのこともだ。
光希はイラ立っていた。
透子のために動いてやりたい気持ちはあるのに、何もかもが思い通りになっていない、この状況。
「くそっ!」
光希の一喜一憂が伝わっているように、会社としての売上自体にも翳りが出始めた。
こんなことは、今までなかった。
どうすればいいんだ?
何を選び、どう動けばいいのかわからない。
どう取捨しても、上手く行く気がしなくて。
焦りが迷いに繋がり、迷いが判断を鈍らせる。
順当に行っていれば、計画は次の段階に移行できていたというのに。
そんな時だった。
『cavalier』に、内藤がやってきたのだ。
光希はイラ立ちを顔に出さないように努め、内藤に向き合った。
「来る時には連絡をくださいよ。いつも突然なんだから」
「突然じゃなきゃ、おもしろくねぇだろ」
にやにや。
内藤は不愉快に口元を上げ、
「俺が来るのが嫌なのか?」
嫌に決まってる。
けれど、光希はそうとは言わず、「まさか」と、笑みを返した。
内藤はまたにやりとし、