水面に浮かぶ月
しかし、2日後。
本当にヨシヒサはこの街から飛んだらしい。
強気な気持ちとは裏腹に、光希は焦りが隠せなくなった。
内藤との約束は、明日までだ。
明日までに動くためには、もう、優也とシンを使う以外にない。
仕方がないんだと言い聞かせ、光希は事務所に戻った。
ミーティング待ちをしていた優也が、「お疲れさまです」と、席を立って頭を下げるが。
「シンはどうした?」
「いえ、それがまだ戻ってなくて」
「どこにいる? 仕事はもう終わっているはずだよ。連絡は?」
「ありません」
光希は舌打ちする。
「『ありません』じゃないだろう! シンの責任はお前の責任だ! さっさと探してこい!」
光希がこんなにも感情をあらわにしたことなど、今まであっただろうか。
驚いてびくりとした優也は、顔をうつむかせ、
「光希さん、最近どうかしてますよ」
声を震わせる。
「シンだってそうだ。みんな、何かおかしいですよ」
おかしい?
俺が、おかしいだって?
光希が反論の声を上げようとした時、後ろのドアが開いた。
「シン!」
シンが、息を切らして入ってきた。