水面に浮かぶ月
「誰がこんなことを……」


優也は茫然としていたが、



「光希さん! 警察に通報しましょう! 石が投げ込まれるなんて、普通じゃない!」

「いや、いい。とにかく片付けよう」


動じないように。

顔に出さないように。


光希は努めて冷静に言った。



「シン。ほうきを持ってきて。それと、朝になったらガラス業者に」


言いながら、振り向いてみたら、シンは驚くほど青ざめた顔をしていた。



「……シン?」


光希は怪訝に眉根を寄せる。

はっとしたシンは、瞬間、足を引き、



「……俺、は……」


そのまま、店を飛び出してしまった。



「おい、シン!」

「シン!」


光希と優也は呼び止めようとするが、追いかけるには遅かった。

優也はおろおろとし始める。



「一体、何がどうなってるんですか! 石が投げ込まれたり、シンが変な行動を取ったり! 俺もう、何が何だかわかんなくて、怖いですよ!」


何が何だかわからないのも、怖いのも、俺だって同じだ。

けれど、立ち止まっていられる時間も余裕もないのだ。


しゃがみ込んでしまった優也を見つめながら、光希は、途方に暮れた。

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