水面に浮かぶ月
シンと連絡が取れなくなった。
その上、優也も「体調が悪い」と言って、出勤していない。
今日は、内藤との約束の日だ。
光希はいよいよ困窮した。
打つ手がないどころか、明日の我が身さえ危うい状況なのだから。
どうしたらいい?
どうしたらいい?
どうしたらいい?
何もかもが、こんなに一気に崩れることなんてあるのか?
だが、いくら考えたところで答えは出ないどころか、考えれば考えるほど、深みにはまる。
日付が変わり、内藤との約束の日を過ぎた瞬間、携帯が着信音を響かせた。
「時間切れだなぁ、光希ちゃんよぉ」
「内藤……」
「呼び捨てかよ。まぁ、今のお前にゃあ、いつもの余裕はねぇだろうが」
「やっぱりあれはお前がやったんだな」
「何のことだかわかんねぇが、人を疑う時は、まず証拠を揃えてから言えや」
はぐらかす内藤。
内藤の、にやついているであろう顔が、目に浮かぶ。
光希はそれでも怒りを押し殺す。
「何を言うために電話をしてきたんだ」
「築き上げてきたものをひとつひとつ失っていく感慨はどんなもんかと聞きたくてなぁ。手駒ももうねぇんだろう?」
まさか、こいつはヨシヒサに余計なことを吹聴し、わざと俺から遠ざけるように仕向けたんじゃあ。
と、するならば、昨日のシンの不可解な行動も、こいつが原因か?
「俺を嵌めるためにすべてを仕組んだのか」