水面に浮かぶ月
はっきりと、リョウは言い捨てた。

透子の言葉を、表情を、『猿芝居』だと。



「お前、ほんとは何者だ?」

「……え?」

「何の目的があって俺に近付いたのかと聞いてんだよ」


冷たい瞳をさらに濁らせ、リョウは透子を見下した。



「本当のことを言ったらどうだ? 透子」


この街を追われ、リョウは疑心暗鬼になっているだけだろうか。

いや、しかし、それにしては、カマを掛けているような言い方ではない。


まさか、と、透子が思ったことを、リョウは口にする。



「お前のこと、調べさせてもらったぜ。ネットで検索したら、すぐに名前がヒットした」


リョウは透子の首に手を掛ける。



「14年前の、地方新聞の記事だった。お前、親に捨てられて、施設に入ったそうじゃねぇか」

「………」

「そして、それと同じ頃。同じ街で、同い年の、“虐待されてるところを保護された少年”がいた。誰のことだかわかるよなぁ?」


やばい。

やばい、やばい、やばい。


体が小刻みに震える。


その先を言わせるわけにはいかない。

だが、リョウはにやりとし、



「まさか、透子と光希が裏で繋がってるなんて思いもしなかったぜ」


ぐっ、と、透子の首を掴むリョウの手に力が込められる。


苦しい。

息ができない。
< 140 / 186 >

この作品をシェア

pagetop