水面に浮かぶ月
突如、シンは、狂ったように奇声を発して叫んだ。


何事なのかと思った。

それが、痛みからではないだろうとは思ったが、



「……シン?」


シンの体は、ガタガタと震えている。

その目は真っ直ぐに優也を見ていて。


優也ははっと笑った。



「何で生きてんだよ、お前。まったく、役に立たないなぁ、内藤も」


吐き捨てるように言う優也。

別人のような顔をして、優也は蔑むようにこちらを見ている。



「シンが生きてる所為で、計画が狂ったじゃないか。せっかく、光希さんにも死んでもらおうと思ってたのに、これじゃあ、台無しだ」


嘘だと思いたかった。

と、いうより、わけがわからなかった。



「……優也?」


光希は恐る恐るその名を呼ぶ。

優也はクッと笑い、



「あんたを消せと内藤から頼まれた。でも、ただ殺したんじゃ、アシがつく。だから、すべてをシンの仕業に見せかけ、何もかもを失ったあんたを自殺に見せかけて殺すつもりだったのに」

「………」

「そしたら、俺はあんたに成り変わって、この街を支配できるんだよ。あんたみたいに馬鹿で甘っちょろいやり方じゃなく、賢くね」


今まで、誰よりも信用していた優也が。

優也だけは、裏切らないと思っていたのに。


身内に足元を掬われるとは、このことか。
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