水面に浮かぶ月
「心配すんな。順番が逆になっただけで、次はてめぇの番だよ、光希。一緒にぶっ殺してやるんだから、感謝しな」


光希は、充血した目でリョウを睨み上げた。

刹那、



「警察だ! 全員、その場を動くな!」


無数のばたばたという足音と共に、ドアが開けられ、警官隊がなだれ込んできた。

すぐにリョウを中心に包囲され、



「なっ!」


面食らったように、リョウは思わず足を引く。



「てめぇ! サツに垂れ込みやがったな!」


しかし、時すでに遅く。

「確保!」という声と共に、抵抗虚しく、リョウは警官隊に拘束された。


後ろ手に押さえ付けられ、手錠を嵌められたリョウは、



「許さねぇぞ、光希! てめぇの所為で、俺の人生は何もかもがめちゃくちゃだ!」


それでもわめき散らしていた。


だが、もう、光希の意識はそこにはない。

腕の中にいる透子は、目を瞑って動かない。



「透子。起きて。お願いだから。透子がいれば何もいらない。だから、頼むから目を覚ましてよ」


光希は必死に透子を揺すった。



「動かしてはダメだ! おい、救急車をまわせ! 重傷者がいる! 意識がない!」


警官隊は慌ただしく動きまわっている。

光希は、それでも透子を揺すり続けた。



「透子!」


叫びが、虚空に消えた。

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