水面に浮かぶ月
夢と約束と
思い返せば、それは、長い、長い、夢だったのかもしれない。
どれだけ歩いても、その洞窟は真っ暗で、右も左も前も後ろもわからないまま、透子はただ、自分の向いている方へと進み続けた。
もうダメだ。
歩けない。
喉が渇いた。
ひとりは嫌。
何度も諦めかけては、闇への恐怖が先に立ち、身震いして、また歩き出す。
声を出したかったのに、喉の奥が詰まっていて、あ、とも、う、とも言えなくて。
心細くて、何度も何度も心の中で光希の名前を呼んだ。
どれだけ歩いたのか、いよいよ気力は限界に達し、その場にうずくまってしまう。
その時、前方から、小さな光が見えた。
あそこが出口だ。
きっと、あそこに行けば楽になれるはずだと、希望を抱いて透子は立ち上がり、駆け出そうとするが、
「そっちへ行かないで、透子」
光希の声がした。
確かに、光希の声だった。
どこから聞こえたのかもわからないその声に、透子の足は止まってしまった。
暗いのは嫌だから、明るい方に行きたいのに。
なのに、行くことをためらう。
声に、従うべきなのだろうか。
いや、しかし――。
しばらくの後、透子は意を決して足を踏み出した。