水面に浮かぶ月
腕の処置と点滴を終えたらしい光希は、幾分、顔色がよくなったみたいだった。
「煙草を吸ったら元気になった」
と、光希は言った。
光希が笑っていたから、透子も笑った。
ふたりで眠って、ふたりで少しずつ食事を摂って。
繋いだ手は離さない。
窓の外に見える木々は、新緑の色をしている。
優しい風が、カーテンを揺らす。
ふたりで色々な話をした。
「透子の体に傷を作ってしまった」
光希は自分を責め続ける。
「私は、光希の腕の傷の方が悲しい」
透子もまた、自分を責めた。
光希は透子の頭を撫でながら、
「でも、考えてみれば、また同じものが増えたってことでもあるんだよね。傷も含めて、俺たちが一緒に生きてる証だ」
だったら、この傷も、悪くないのかもしれない。
過去からのことを想う。
ふたりで生きてきた日々を。
同じものを共有してきたことを。