水面に浮かぶ月
「それから少し経った頃、呼び出されて行ってみたら、岡嶋組に囲まれて。優也は歪んだ顔で笑ってて。その時に初めて自分が何をしてしまったか気付いた。でももう遅かったですけどね」


シンは自嘲する。



「俺なんて殺されてればよかったんだ。なのに、死んだのは優也で、光希さんは俺を責めてもくれないなんて」


顔を覆う。


いくら悔いても足りない。

胸の痛みは時間が経てばたつほど大きくなっていくばかり。



「俺、馬鹿だから。仕事だって光希さんの望みには程遠い結果ばかりだったし。だから、今回のことで、いよいよ俺は呆れられてるんだと思います。責める気にもならないくらい、俺のことを」

「そんなことはないと思うけど」


透子はたしなめるようにシンの言葉を遮る。



「光希はね、誰のことも責めたりしない。いつも真っ先に自分の所為だと思って、人知れず苦しんでる人なの」

「………」

「だから、きっと、あなたに対しても同じ。光希はこれっぽっちもあなたのことを悪いとは思ってないはずよ」


シンの目の淵から、大きな一粒の涙がこぼれた。

声が震える。



「どうして俺の所為だと言ってくれないんですか。俺は、責められたかった。ひどい言葉でなじられたかった。……そしたら俺だって少しは楽になれるのに……」


ぼろぼろと、涙をこぼすシン。


透子の綺麗な手が、シンの頬に添えられた。

涙で冷やされたそこに、触れるぬくもり。



「ごめんなさいね。私と光希の『約束』に、あなたを巻き込んでしまって。利用してしまって、ごめんなさい」

「………」

「だから、あなたは苦しまなくてもいい。それは、私と光希が背負うものだから」


シンは顔をくしゃくしゃにして泣いた。
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