水面に浮かぶ月
光希からの手紙を読み、透子は笑みをこぼした。
2012年7月7日。
透子のもとに、【M】というイニシャルの入った、白いバラの花束が届いた。
きっと、光希に頼まれたシンが、代わりに送ってくれたのだろうけど。
「相変わらずね、あの人は」
あの人も、私も、相変わらずだ。
きっと、ずっと一生、私たちはこうなのだろうと、悲観するでもなく思ってみたり。
風は、夏色。
部屋を満たす、バラの香り。
透子は、光希と歩んだこれまでのことを懐古した。
確かに、辛く、苦しい日々だった。
しかし、不思議と後悔はない。
乗り越えた先にある“今”を、より大切にできるから。
手紙は続いている。