水面に浮かぶ月
「俺もです。俺も、光希さんを驚かせるくらいの結果を残します」


まるでこの空気に飲み込まれたように、優也も熱く言った。


どいつもこいつも簡単なものだ。

光希は笑い出しそうだった。



「それは楽しみだな」


ほほ笑んで見せた光希。

ほっとしたらしいふたりの、緊張の糸がほぐれたのがわかる。


だから、顔に出すなといつも言っているのに、と思ったが、今はそれを内心で留めた。



「じゃあ、今日はこれで終わりにしよう」


光希は席を立った。



「いつも遅くまでありがとう。帰ったら、ゆっくり体を休めてね」


ふたりは「失礼します」とまた頭を下げ、部屋を出て行った。


ドアが閉まるのを確認し、光希を宙を仰いで息を吐く。

さすがに疲労が蓄積されているのがわかる。



光希は自嘲して、右手の中指にある指輪に触れた。



こんな毎日を送っていて、正直、きつくないと言えば嘘になるが、それでも自分が望んだことだ。

地獄で育った光希にとっては、気を抜けば、あんな日々に逆戻りしてしまいそうで、それが何よりの恐怖なのだから。


上り続けるしか、道はない。




他人を利用し、時には蹴落としてでも、勝たなくてはならないのだ。




そこにしか幸せはないのだと、光希は必死で自分に言い聞かす。


待っていても、やってきてくれるものではない。

だから、未来は自分の手で掴み取るしかないのだ。

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