水面に浮かぶ月
岡嶋組の組事務所に到着すると、待ち構えていたらしい若衆に中へと案内された。
悠然と歩く光希と、挙動不審についてくる3人。
くたびれた黒革のソファに座っていた内藤は、光希に気付き、
「仕事が早ぇなぁ、光希ちゃんよぉ。連絡をもらった時は、驚いたぜ。まぁ、座れ」
向かいのソファへと促された。
若衆に取り囲まれる中、光希は言われた通りにそこに座った。
内藤は、光希の後ろに立ちすくんでいる3人に一瞥くれたので、
「『龍神連合』のやつらです。一番右にいるのが、5代目ヘッドのヨシヒサ」
さすがのヨシヒサも、「うっす」と、挨拶をする。
内藤はにやつきながら、
「あぁ、あの、暴走族崩れか」
値踏みするような目で、改めてヨシヒサを見た。
「あんまり礼儀を知らない子たちですけど、許してやってくださいね」
「まぁ、お前みたいに礼儀正しすぎても気味が悪ぃしな」
光希を牽制する内藤。
うるさいんだよ、くそ野郎。
内心で吐き捨てながらも、光希は「ひどいなぁ」と笑って見せた。
内藤は肩をすくめ、
「で? どんな埃を叩き出したんだ?」
光希は日高から奪い取った書類と携帯、そして失禁写真を記録したデジカメを提示した。
「使えるネタだらけだと思いますよ」
「相変わらず、堅気のガキのやることじゃねぇなぁ」