水面に浮かぶ月
確かに最近のリョウは色々と目に余るものがあったし、光希もそのうちどうにかしてやるつもりでいた。
だから、それが早まっただけのことである。
しかし、クスリの情報を手に入れろとは、どうしたものか。
さんざん、考えを巡らせたが、いい案など思い付くはずもなく、光希は途方に暮れた。
顔を覆う。
この方法だけは避けたいところだったのだが、そうも言える状況ではない。
テーブルに拳を叩き付け、光希は息を吐いて、携帯を手にした。
ディスプレイに透子の名前を表示させ、通話ボタンを押す。
「透子。俺だけど」
声は、僅かに震えた。
「どうしたの?」
「今から会えないかな」
「……今から?」
「ごめんな、こんな時間に」
「何かあったのね」
察しのいい透子。
光希は胸につまされる思いだった。
少しの間を置き、透子は「わかった」と言った。
「どんな理由でもいいの。光希が私に会いたがってくれてるだけで、私は嬉しいもの」
何も言えなかった。
光希は、代わりに、近場のラブホテルを指定し、電話を切った。
心底、泣きたくなった。