水面に浮かぶ月


食事を終え、店を出て、これからどうするかと話す頃合いで、透子は、



「私、酔っちゃったみたい」


と、リョウの腕にしな垂れ掛かった。

リョウはそんな透子の肩を抱き、「ったく、しょうがねぇな」と言いながら、一緒にタクシーに乗ってくれた。


透子のマンションまで送ってくれたリョウは、下心があるからなのか、それとも本気で介抱してくれるつもりだったのか、律儀にも部屋まで肩を貸してくれた。


だが、部屋に入ってしまえば、後は男と女だ。

顔が近付き、どちらからともなくキスをして、そこからはもう、もつれるままに行為に及んだ。



正直、透子にしてみれば、怖いくらいに事が上手く運んだ結果となった。



しかし、本当の勝負はここからである。

リョウと一夜限りの関係で終わるわけにはいかない。


行為の後、透子はリョウの体に抱き付き、



「私、本気であなたのことを好きになってしまったみたい」


リョウは怪訝に煙草の煙を吐き出し、なぜか沈黙を作ってしまう。


うざいと思われれば、すべてがダメになる。

透子が焦りそうになった時、



「じゃあ、付き合う?」


リョウは横目に透子を見やった。


内心、ほっとした。

リョウがどういうつもりで言ったのかはわからないが、それでも、これで自分の役目を果たすことができるから。



「嬉しい。大好きよ、リョウ」


透子はリョウにくちづけを添えた。


リョウのすべてを盗み取る。

それが、光希が透子に求めたことなのだから。

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